3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/04/29(月) 07:31:46.31 ID:IfvVtyDz0
そんな事を考えていたら少し元気が出たので、俺は買ってきたつまみの中から柿ピーを取り出すと、
自殺した戦場カメラマンの作品、紛争地で死に掛けている少女と、少女の死を待っているハゲタカ、
みたいな構図で俺を見ている鳩たちに、鳩の皆に分け与えた。皆は喜んで柿ピーを食らい、俺も
喜んでそれをうち眺めたが、その内にある問題が目に付くと、そこから湧き上がった苦悩が俺の胸を
内側から圧迫した。苦しみの鳩胸。
一口に鳩といっても良く見ると十人十色ならぬ十鳩十色で、でかいの小さいのから色の黒いの、マフラー
を巻いたように首の周りだけ白いの、果ては全身白いのまで様々である。柿ピーを与えながら俺は、
鳩にも色々いるんだねぇ、皆違って皆いい!などと思っていたのだが、密かに権兵衛と名付けたでかくて
黒いやつが、小さくて白いやつ、すなわち凛太郎を苛めだしたのである。凛太郎は俺が公園に入って
すぐに後を付いてきた鳩で、その上品な見た目と控えめな立ち振る舞いからしておそらく高貴の生まれ
である事はまず間違い無いのだが、いかんせんワイルドさに欠け、鳩の群れの中でも孤立しがちで
あった。それに対し権兵衛は卑しい家柄の出でありながら嘴っ節ひとつで成り上がってきた豪傑で、つい
3日前にそれまで群れをまとめていた喜十郎(故鳩)を倒すと、そのまま群れの頭目の座に着いた。と
思われる。おそらく。
群れのボスとして力を誇示したいのか、あるいは自身のコンプレックスを凛太郎の生まれ持った高貴さが
刺激するためか、権兵衛は凛太郎を目の敵にし、ことあるごとに蹴ったりつついたり、食い物を奪ったり
した。そんな場面を目の当たりにした俺は凛太郎に哀れを催し、群れから少し離れて一羽佇む凛太郎の
方へ、他の仲間や権兵衛から見えないようにピーナッツを投げたりしていたのだが、どうにもタイミング
が合わず、弾いたピーナッツが凛太郎の方へ向かうのをいち早く察知した権兵衛がすぐに飛んで行き、
ひるんだ隙を突いてピーナッツを奪い、ついでに凛太郎を蹴った。俺は激怒した。
つまりこいつは権兵衛は、食い物が欲しいだけでなく目下の宿敵である凛太郎も排除したいのである。
しかし怒った俺に出来ることといったら、「こら権兵衛、凛太郎を苛めてはいけませんよ。生きとし生ける
ものは皆、哀れで尊いのです。喜びも悲しみも全て分かち合いなさい」と言うくらいで、弘法大師ならまだ
しも、ヒモくずれの俺の説教を鳩が聞くはずもなく、結局は権兵衛グループ、凛太郎にそれぞれ8:2くらい
の割合で食い物を放るくらいしかできなかった。
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