2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/04/29(月) 07:31:02.78 ID:IfvVtyDz0
鳩が焼き鳥を食うというのはいわば人が猿を食うようなもので、いくらアホな鳥類とはいえやはり自分に
近い種の生物を食うのは躊躇うのではないか、という考えのもと実験を試みた、というか試みてみよう
と思っていたのであるが、公園に足を踏み入れた直後から1羽、広場を横切ろうとして3羽、ベンチを
見つけて8羽くらい、見る間に鳩はその数を増やし、俺に対する包囲網を完成させた。
手にぶら下げたポリ袋か、そこから立ち上る焼き鳥の臭いか、あるいは俺自身のだらけきった風貌から
醸し出される駄目なオーラのいずれかは分からないが、鳩にとって俺は「飯をくれる人」としてカテゴライズ
されるに足る要件を満たしており、そうなると基本的に食うことしか頭にない鳩のこと、「この人はいつ
飯をくれるのかな」という事しかもはや頭になく、俺がこいつらを目の前に食い物をうまうま全部平らげ
たり、実はピジョンハンターで集まった鳩を何か不思議な道具をもって一網打尽にする、などといった
リスクについては考えもしない。
つまるところ今回の実験の争点となっていた「鳩は鳥を食うのに躊躇するか」なんぞということはこいつら
の前では本当に些細な問題で、食わなきゃ死ぬだけのこと。何事も取りあえずは腹を満たしてからと
いう訳で、先に上げたリスクに関しては、まあ野生の勘に任せる。ボーントゥビーワイルド。
潔い、と言えば聞こえは良いが、おそらく鳩どもは俺が投げるものは焼き鳥であれ何であれとりあえず
食うだろうということが予想できてしまうと何だか面白くない。やってみたら食わないなんてこともある
かも知れないが、だからと言って何だというのか。だんだん思考がダウナーになってきて、野生で堂々
生きてる鳩を、焼き鳥を食うかどうかなんて人間的な考えで馬鹿にしようとした事への後悔。日も高い
内から公園で酒を呷る俺と比べ、異様にヴィヴィッドな色合いの服を着てあちこちをほたほた走る
健康志向ランナーに対する僻み。人生。なんだか色々なことが嫌になって、つまみも食わずに流し込んで
いたハイボールが空しくなる頃、
「鳩になりてぇなあ」
と一言、つぶやいた。鳩、いいねぇ鳩。やれ健康だヒアルロン酸だなどとのたまってあくせくしている
人間とは違う。生きるか死ぬかの究極のギャンブルに日々その身を投じて、食い物を恵んでもらっても
胸を張る。鳩胸を。ナチュラルボーン鳩胸。いいねぇ。
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