80:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/05/08(水) 16:15:10.97 ID:y9M/z2Za0
「…私は、後悔してないよ」
『………』
見抜かれていた。表情に出ていただろうか。
心臓の鼓動が早くなる。平静を保たなければ。
「私の身体のこと、心配してるんでしょ」
「自分が、アイドルに誘ったから、加蓮が…なんて」
「プロデューサーは、そう思ってるかもしれないけど」
「今…私は、とっても幸せ。これ以上ない、ってくらいに」
「寝てる時に、アイドルに憧れてた頃の夢を見たの」
「でも今は夢じゃない…。叶えてくれたのは、プロデューサーだよ」
そう言って、彼女は儚げに笑ってくれる。
俺が加蓮を元気づけに来たはずだというのに。
「初めて会った日の事、覚えてる?」
「アイドルなんて無理だと思ってた私に、夢を見せてくれたよね」
ああ、覚えてる。忘れるはずがない。
今でも、加蓮との思い出は、何1つとして忘れてはいない。
「…今日は、少しだけ。私の過去を知ってほしいな」
春の訪れを祝うかのような暖かい風が、月明かりに照らされた病室を吹き抜ける。
微かに開いた窓から入るそれに揺れる、黒い空に対照的な、白いカーテン。
今にも消えてしまいそうな、彼女の儚げな姿に、俺は目を奪われていた。
「まずは、私の小さい頃のお話をしようかな」
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