995:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/07/01(火) 11:28:29.36 ID:Yt2RSFXVo
ガチャリ。
明かりの消えた事務所には案の定誰もいなくて、ドアを開ける音が妙に大きく響いた。
「ちひろさん、もう帰っちゃったのかな」
呼びかけながら、何となく忍び足で、中に入る。
まぁ、今日は早く帰るって、知ってたんだけどね。だから来たんだし。
外はまだ少し明るくて、夕明かりを頼りに、プロデューサーの机に近づく。
そして、そっと触れてみる。
「──っ!」
鼻にジンとこみ上げてきて、慌てて手を放した。
そして、向かいにあるちひろさんの席に腰を掛けると、涙がこぼれないように天井を見上げる。
いつからかなぁ。
いつから、プロデューサーの事、こんなに好きになっちゃったんだろ。
いきなりスカウトされて、お互い何も分からない中、必死で頑張って。いつも一緒にいて、それが当たり前になってた。
でも、仕事が軌道に乗ってきて、事務所に人が増えたら、なかなか二人の時間が取れなくて、それで苛々しちゃって、気がつけば目で追うようになってて。
プロデューサーがうちまで来てくれた時は嬉しかったな。ちゃんと気に掛けてくれてたんだ、って。そっか、それで気がついたんだ。
自分が、プロデューサーを好きになってる事。それで……
「…あーあ。なんで…」
なんで、あんな事言っちゃったのかな。なんで、こんな事になっちゃったんだろう。
──ずっと、黙っていればよかった。
自分の気持ちに気がついたら、後はそれをどう伝えるか……それしか考えなかった。
だから、トップアイドルになろう。
自分は子供で、あの人は大人だから…私はアイドルで、彼はプロデューサーだから、普通にやったら、駄目だから。
シンデレラガールになって、告白すれば、プロデューサーも応えないわけにいかないはず。
そう思ったから、元々適当にやってたワケじゃないけど、それまで以上に死に物狂いで頑張った。
頑張って、頑張って、そして、シンデレラガールを掴み取ったその日に、私はプロデューサーに、私の気持ちを伝えた。
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