過去ログ - 菫「荒野より君に告ぐ」
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6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/02(木) 11:46:53.09 ID:kADqiJRHo
 
人殺しなんて一生自分には関係ないと思ってた。
それでもやらなくちゃならない。
目の前には完全に停止した咲がいる。まじまじと見ると菫の知っている咲よりも少しだけ幼い。
思い出らしいものはなく、元いた世界で三度しか会ったことはない。交わした会話も片手で数えられるほど。
だけど、いい子だと思った。純粋無垢で、菫の思い描く理想の妹像だ。

なんだ。玄と変わらないじゃないか。
だったらなんで玄を殺すんだ。生首渡されて喜ぶ姉がいるはずないだろ。そんなこともわからないのかよ。

玄を失い、照の生存を知らない菫は、すべての不条理を咲へぶつけようと決めた。
狙うは首筋。「やってくれ」と純が叫んだ。
心臓の高鳴りが唇まで伝わってきて、それを押さえつけるように血が出るほど噛み締めた。


四秒――


腕を振ることはできなかった。
矛先が赤の他人であれば今頃そいつの首からは鮮血が噴出し、返り血に染まった菫が躊躇無くめった刺しにしていただろう。
止まった刃に映った自分と目が合い、よじれた声を漏らす。

菫「できるわけないだろ……っ」

根性無しだと笑う奴は人間じゃない。
平和な世界の道徳を植え付けられた菫にとって、知り合いの殺害は一線を越えていた。
暗器を床に叩きつけ、呪文のように妹の名を呼び続ける宥の腕を掴んで無理やり立たせた。
失意の眼差しを向けてくる純へ顔を背けたまま言った。

菫「逃げるぞ」

純「……、」

菫「私には無理だ」

純「衣様を頼みたい」

菫「……あ?」

純は抱きかかえた衣を菫に無理やり押し付ける。
困惑する菫をよそに、純は投げ捨てられていた暗器を拾い上げると咲へ、

菫「待――!!」

首のねじ切れる音がした。


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