977:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/05/27(月) 01:37:44.34 ID:nYn1ITp6o
彼はそう冷たい言葉を放つのだが、顔は硬派っぽいといった表情をしているのだ。
どこか熱さを内に秘める少年。何かの漫画の主人公のような性格でもある、分かりやすい彼が、次第に気になっていたのだ。
「私の脳内はメルヘンですから」
「はいはい、んじゃあ俺はあっちでお前のエロ本読んでるから」
「同人誌ですから!」
この頃の私は、まだ敬語で彼と接していた。距離感が分からなかったから、彼にどう歩み寄れば良いか分からなかったから。
そうして、私の描いた同人誌を読み耽る彼を、時折眺めてしまう。夢中になっている。嬉しいような、恥ずかしいような、といった気持ちが渦を巻く。
そんな風に、寒い日も、暖かな日も、彼と屋上で過ごして来た。しかし、長谷川夢、私の姉がこの開成学園に転入して来ては、私の邪魔をする。
何故姉が現れたのか、それも理由は簡単だ。あの家に私を連れ戻そうと考えているらしい。
「……夏コミ、憂鬱……」
エロ同人誌を描かされている私は、元々好んでそれを描き始めた訳ではない。
しかし、この分野だけに関しては私は才能が有るらしい。実際に本を出して売ってみれば、百冊すらあっという間に飛んでいく。
ちょっとした売れっ子となった私だったが、次第に気持ちはやはり絵本に傾いていった。
「絵本、描きたいなぁ……。でも、夏コミ近いし……」
鴨志田君は、今日は朝から出掛けていってしまった。まるでデートに向かうように髪をセットしていた。
姉が現れ、色々とあっては女の子となった彼に、私は度々世話を焼くことに決めたのだが、今日は何もやる事が無い。
部屋に閉じこもり原稿と睨めっこ。下描きまで進んだのだが、構図やコマ割が気に入らなくなってしまう。
「うぅん、これもやっぱり駄目! 鴨志田君に似てるし!」
そうして、何枚もの原稿をくしゃくしゃと丸めてポイ捨てしていると……>>978
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