30:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/05/10(金) 21:58:12.45 ID:6g5KaO/h0
「Pさん?」
甘い声がプロデューサーの耳をくすぐる
気が付くと、菜々はプロデューサーの背後に回っていた
彼女はプロデューサーの腕を掴むと耳元でささやいた
「今まで黙っていた事については本当にごめんなさい、全部私の責任です。」
やわらかく甘い匂いがプロデューサーを包む
子供の頃、日向で嗅いだことのあるような春の匂いがした
「本当に楽しかったんです。Pさんに、事務所のみんなと笑って、泣いて、たまには喧嘩もして……」
「まるで夢のようでした。私の憧れを詰め込んだような時間でしたから……」
プロデューサーは強くこぶしを握った
手の平に爪が食い込み、血が滲む
自分の無力さが腹立たしかった
「だから、残したいんです……」
菜々は後ろからプロデューサーを抱きしめた
「私がここにいたって証を……」
「手伝ってくれますよね?」
振り返ったプロデューサーの意思は一瞬で固まった
「わかった。厳しくいくから覚悟しろよ?」
あの日のような作り笑顔ではなく、純粋な彼女の表情
涙が頬を伝い、顔はくしゃくしゃになっている
涙に濡れた頬は赤くなり、濡れたまつげの黒さを引き立てる
「はい、お願いしますね?」
嗚咽混じりに菜々は言った
「最高にでっかいもん残してやろうぜ……」
「シンデレラガールズ、アイドル総選挙獲りにいくぞ……!」
「はい……!」
今は前に進むしかない
できることはそれ以外に何もない
もしかしたらそれはその場で足踏みをするような行為かもしれない
それでも……
プロデューサーと菜々の手が空へと伸びる
二人の手のひらが気持ちのいい音を立てた
124Res/98.87 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。