過去ログ - 長谷川千雨「鳴護アリサ、って知ってるか?」
1- 20
388:ちさめンデュ ◆nkKJ/9pPTs[saga]
2013/07/29(月) 15:07:43.62 ID:h2L6EFVh0
>>387

「無間方処か」

呟いた土御門は、庭園の中の最大のアクセント、そこに踏み込む覚悟を決める。
ここで血まみれになりながら術式の出所を見破ったとしても
その先に何が待ち構えているか分からない。
土御門は手水を使い、にじり口から建物の中に入る。
その向こうは、広いが落ち着いた茶室だった。

「座りなさい」

穏やかにして威厳を秘めた声に勧められ、土御門は下座に正座する。
そして、茶室の主を見た土御門は腰を抜かしそうになった。
茶釜の側、茶室の主の位置にいるのは、
神主を思わせる和服に豊かな白眉に白い髭を長く伸ばした、
それこそトンカチみたいな才槌頭の後頭部からも一房の白髪を伸ばしている老人。

いやいやいやいやアロハにグラサンはねーよすいませんでしたと、
土御門にして全力で非礼にひれ伏して退散したい所だが、それが出来ない事が分かっている。
今までもトップクラスとは決して無縁では無かったエージェントとして腹をくくる。

そして、左前方を見る。その時点で、イメージとしてはグラサンがピシッと音を立てる。
そちらに座るスーツ姿の中年男は、
一見すると不健康そうにやつれの見える顔立ちながら、その落ち着きはただ者ではない。

そのスーツの男が眼鏡の向こうから穏やかな眼差しを土御門に向けた時、
土御門は熱湯の様な汗が背中に溢れるのを自覚する。
そのスーツの男は、傍らの野太刀を引き寄せ柄に手を掛ける。
そして、座り直して目の前にあった盆を才槌の亭主に手渡す。

「御義父様」
「ん」

かくして、才槌の亭主が茶席に今手渡された菓子を回す。
回された最高級の羊羹は精緻に切断され、丹念に塗り重ねられた漆塗りの器には傷一つ無い。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
979Res/1016.74 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice