189:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/29(水) 07:00:35.30 ID:wqPpjqSYo
しばらく、部屋の中には何の変化もなかった。雨の音だけがずっと続いている。
気付けばわたしは、本を読むのをやめてツキの方をじっと見つめていた。
やがて彼は、やはり身じろぎひとつせず、顔もこちらに向けないまま、
「何か音楽を掛けてくれないか?」
と言った。わたしは返事もしないかわりに反発もせず、音楽を掛けることにした。
スピーカーから流れ始めたのはシーナ・イーストンの「モーニング・トレイン」だった。
わざと明るい曲を掛けたのだ。なぜかは自分でも分からない。
……別に元気づけたいわけじゃない、と思う。
それにしても、深く落ち込んだ様子の男の人が、「モーニング・トレイン」を静かに聴いているのは、少し滑稽だった。
わたしは、こんなにも悲しそうに「モーニング・トレイン」を聴く人を、初めて見た気がした。
もちろんそれは真実で、わたしは他の人が音楽を聴くところなんて、初めてみたのだけれど。
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