344:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/08(土) 06:17:22.18 ID:Onzl2ZvFo
わたしはとにかく歩き出すことにした。
ツキを探さなければいけない。
見つけられなかったときや、既にツキが下界の人々に捕まっているときのことは考えないことにした。
いずれにしたってわたしは、この森の中を歩いてみなければならない。
森の中には、はっきりとした道があるわけではなかった。
屋敷から入ってすぐの場所には、多少歩きやすい道があるけれど、そこだってしばらく進めば木々に阻まれる。
仮に道があったとしても、ツキがそうした分かりやすい道を歩くとはえない。
だとするとわたしは、この森の中を、何の心当たりもなく、進んでいかなければならないのだ。
周りに人の気配はなかった。
それが幸いなのかどうかは、わたしには分からない。
もうツキが見つかってしまったのかもしれないし、ここまで捜索の手が伸びていないだけかもしれない。
木々の枝葉が奇妙に輝いて見えた。空は灰色だけれど、雫が照らされて光っている。
雨の音。濡れた土の匂い。
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