348:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/08(土) 06:21:02.78 ID:Onzl2ZvFo
しばらく歩き回ってみても、ほとんど何も見つからなかった。
ただ木々や草花が生い茂っているだけだ。足場は悪く、草の上の露が何度も足を濡らした。
樹木が枝を伸ばしているせいで、ここからは太陽がろくに見えなかった。
霧雨が、森の暗さと相まって視界を悪くさせた。わたしは不安になる。
迷い込んではいけない場所に来てしまったような、居心地の悪さ。
わたしはそれでも歩く。催眠術にかかったみたいに。
自分が分裂しているような頼りなさ。
何かがわたしをどこかへ引きずり込もうとしているような錯覚。
それはもちろん錯覚でしかないのだけれど。
「助けなきゃ」
わたしはその言葉を口に出してみた。誰に対してというわけではない。
ただ口に出すと、その言葉はすとんと胸に落ちた。頭が軋むように痛んだ。
ツキを助けなければ、と思う。でも、何かがそれに反発している。
何か? 何かって、なんだろう。
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