354:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/08(土) 06:27:24.67 ID:Onzl2ZvFo
そうやって泉を覗き込んでいるとき、不意に、水面に自分の顔が映っていることに気付いてぞっとする。
水面に映る自分と、目が合った気がした。
凍てつくような目。誰とも知れない他人のようだった。
思わず顔を逸らし、今見たものを忘れようとする。心臓が嫌にうるさかった。
自分の顔を見たのは久しぶりだという気がした。
心底、嫌な気持ちになる。薄暗い場所で、何かも分からない奇妙なものを踏みつけてしまったときのような気分。
深呼吸をする。景色は綺麗だったけれど、わたしの気分は落ち着かない。
ツキを探さなくては、とわたしは思う。でも、すぐには動けなかった。
今、水面にうつった自分の顔が忘れられなかった。どうしてだろう。
さっきまでよりずっと不安な気持ちになる。泣き出したい気持ち。
どうしてわたしはこんなふうなのだろう。蹲って顔を伏せてみると、本当に泣き出してしまいそうだった。
わたしはこんな場所で何をやっているんだろう。
そのとき、不意に、
「アヤメ?」
と声が聞こえた。最初、何かの間違いかと思った。
顔をあげて声の方を振り返ると、ツキはそこに立っていた。
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