361:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/09(日) 07:05:47.78 ID:Z1eyICRMo
雨音がふたたび強まった。泉の水面が波立つ。
咄嗟には、何も言えなかった。
わたしも何も言わなかったし、彼も何も言わなかった。
疲れ切ったような表情。ツキの顔つきは、今朝見たそれとは、まるで違って見えた。
「どうして、ここに?」
とツキは苦しげに言った。わたしは答えに窮する。
森の中は雨の音に包まれている。空気は少し冷たかった。
ツキの服は、雨に濡れ、土に汚れている。
雨の降る森の中を、彼はこの場所まで逃げてきたのだ。
でも、逃げて、どうするつもりだったんだろう。
彼には逃げ場所なんて存在しないのに。
いつかは追いつかれてしまうのに。
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