422:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/13(木) 06:57:31.34 ID:gz5u5IpNo
石の壁。鏡台。絵画。机とティーカップ。自分が座っている椅子。
わたしの目の前には誰の姿もなかった。
さっきまで誰かと話をしていたような気もするけれど、よく思い出せない。
誰かの姿を見た記憶がない。
ただ、炎が煌々と燃えていた。
わたしは立ち上がり、深呼吸をする。
それから部屋の様子を確認した。
机の上のティーカップは三つ。冷めた紅茶が入っている。
鏡は割れていない。振り返ると、壁に掛けられた絵画は、裂かれてなんていなかった。
おかしなことじゃない、とわたしは思う。
ただ、世界はそういうものだったのだ。少なくともこの世界は。
わたしはわたしのことをちゃんと思い出せたし、感情が切り離されたりもしていない。
壁に大きく映るわたしの影は、ちゃんとわたしと繋がっていた。
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