521:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/19(水) 07:56:42.06 ID:mRUgB+/xo
しばらく、わたしたちは黙り込んだまま歩いた。
彼はわたしの腕を引いたままで、雨は降ったままで、なにも変わっていなかった。
世界がこの場所だけで完結しているような気がした。
外側なんてどこにもなくて、この森の他には世界なんてないような、そんな気がした。
そんなのはわたしの錯覚でしかなく、世界はわたしの意思とは無関係に動いている。
でも、今、わたしはたしかにそんなふうに感じたのだ。
木々が雨に打たれる音。土の感触。雨の匂い。
他には何もないような気がした。
「……違うよな」
不意に、彼は前を向いたまま、自分に言い聞かせるような調子で言った。
「違うんだよな。分かってるんだよ。なんでお前に生きていてほしいのか。
ちゃんと言葉にだってできる。本当はもっと早く言うべきだったんだろうな」
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