20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/05/30(木) 03:39:07.11 ID:ffHVc6Tm0
  ◇  
    
  目をぱちくりとさせても、目の前の幽霊は消えやしなかった。  
  そもそもやえには、さびしんぼうと名乗った少女が幽霊には見えなかった。  
  幽霊というのは、もっとこうおどろおどろしい感じで、顔面蒼白で、足も消えてるものじゃないのか。  
  少女の服装も、よくよく見てみれば遊園地で風船でも配っていそうな、おどけたピエロの格好だった。  
  もっこりとしたオーバーオールに、白塗りのメイク。なんならホラー映画に出てきても違和感がない。  
  しかし全然怖くないのは、中身の少女がホラーという単語からまるでかけ離れた印象をやえに与えていたからだろう。  
  未だ状況の整理が覚束ず慌てふためく様子のやえを見ながら、少女はにこやかに笑っている。  
    
  「あー……そうだな、百歩譲って、お前が幽霊だというのは認めよう」  
    
  そうでもしないと、鍵がかかっている部屋に少女が突然現れたことも、鏡に映るのが冷や汗だらだらのやえだけだというのも説明出来なくなってしまう。  
  だがしかし、仮に少女が幽霊だとしても。  
    
  「どうしてお前は、私のところに出てきたんだ?」  
    
  それだ。幽霊なんてのは、まったく縁がない人間のところへも無闇矢鱈に現れるものだったっけ?  
  それとも何か、実はやえが知らないだけで、昔この部屋で死んだ少女か何かだったりするのか。  
  不動産屋は何も言ってなかったはずだが、ハズレ物件を引かされたのか。  
    
  「それは……」 
57Res/47.78 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 
板[3] 1-[1] l20 
	このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
	もう書き込みできません。