過去ログ - 魔法使い「勇者がどうして『雷』を使えるか、知ってる?」
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164: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/06/01(土) 12:07:48.69 ID:+j7WNh9Vo
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淫魔「……ん。……よく、寝たぁ。お目覚めすっきりです〜」

彼女が眼を覚ました時、そこは、底冷えのする暗闇の牢獄では無かった。
藁を敷いただけの寝床に、着慣れた、不思議な煤だらけのマントをかけられ寝かされていた。
澱んでかび臭い、冷たい空気はもう無い。
干し藁の香りと、埃っぽさはあっても、暖かい空気がその代わりにある。
見回すと、そこは木造の納屋のようだ。
ロープや樽などを積んだ台車のほか、壁にはいくつもの農作業具がかけられている。

淫魔「……えっと、ここ、どこなのでしょう〜?」

首には、まだ痛々しく首輪の跡が残っている。
五年間もの長きに渡り、彼女を縛っていた枷は、もうない。
きょろきょろと周りを見渡し、その明るさに、目を細めた。
天井近くに在る採光用の小窓からは、涼やかな鳥の歌声が聴こえる。
梁に張られた蜘蛛の巣は、美しい幾重もの八角形を描いていた。
それに見蕩れて、緩やかなまどろみを愉しんでいた時、納屋の扉が、長く音を残しながら開いた。

騎士「目覚めたか、淫魔」

淫魔「あらぁ、騎士さん〜。お久しぶりですねぇ」

彼の格好は、酷い有り様だ。
純白のシャツもズボンも煤で汚れており、焦げ跡さえある。
端正な顔にも髪にも煤がまとわりついて、『騎士』の麗しい面影などない。

騎士「……ふん。酷い顔だな」

淫魔「え〜? 騎士さんの方こそ〜」

それは、彼女も同じだった。
気だるい美貌を備えた顔にも、明かりの下で見ると更に悩ましい裸体も、煤まみれだ。

騎士「…………くくくっ」

淫魔「ふふふ……あは、あははははっ!」

騎士「っ……笑うな、馬鹿者。近くに小川がある、顔を洗いに行くぞ。日差しで眼を痛めるなよ? 少しずつ慣らせ」


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