過去ログ - 魔法使い「勇者がどうして『雷』を使えるか、知ってる?」
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178: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/06/01(土) 23:48:06.21 ID:+j7WNh9Vo
やがて部屋に戻り、それぞれベッドで眠りについてから数時間。
月と太陽が役割を代わろうと顔を突き合わせるあたりの時刻、騎士が眼を覚ました。

騎士「ぐ、ぅ……げほっ……!」

止まらず、何度も何度も、咳き込む。
喉に何かが絡んだ、という風ではなく、胸の奥から何か、よくない物を吐き出しているようだった。
身体を起こしても咳は止まず、溺れるように、情けない息を繋いだ。
咳の合間を縫って何とか酸素を取り込もうとすれば、気管に何かを吸い込み、更に苦しみが増した。
思わず、手を口に当てると――――ひときわ大きな咳とともに、暖かい液体が溢れた。
胃酸臭はせず、唾液と言うにはあまりに大量だった。
窓辺から差し込む月明かりに、その手をかざして確かめる。
それは……片手一杯分の、『吐血』だった。

吐き出して咳が収まり、同時に胸筋の奥に感じた不快感と、伴った背筋と肩の突っ張りもすぅっと溶け出した。
数分かけて呼吸を整え、酸素が回って冷静になった頭で、血まみれの手を見つめる。

溺れて血液を吐き出す、この発作。
かつての家で見た、母親の病のものと同じだ。
加えて、逝った父の手記にも書かれていた症状とも……合致してしまった。

騎士「……ははっ」

月明かりの差す部屋に、乾いた笑いが漏れた。


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