過去ログ - 魔法使い「勇者がどうして『雷』を使えるか、知ってる?」
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◆1UOAiS.xYWtC
[saga]
2013/06/01(土) 23:49:31.91 ID:+j7WNh9Vo
数日後、貸しに出されていた小さな家を借りた。
行く先々の村で仕事を引き受けて溜めた賃金、道中の賊から奪った金品を合わせれば数年は暮らしていける。
この町で、一ヶ月か、あるいは数年、しばらく養生するつもりだ。
幸いにも近くに医者も錬金術師もいるし、暮らしていく分にも養生するにも不自由は無い。
まず、暮らしていくための家具を入れた。
以下略
180
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◆1UOAiS.xYWtC
[saga]
2013/06/01(土) 23:50:37.34 ID:+j7WNh9Vo
その家に住んでから、罰が当たりそうなほどに穏やかな時を過ごした。
淫魔はパンを焼く事を覚えて、騎士も、市場での荷運びの仕事にありつけた。
朝に出て行き夕方に帰り、共に暖かい夕餉を食し、なんでもないような会話を楽しんだ。
仲睦まじい夫婦の姿をなぞって、ありきたりな幸福を、分かち合った。
以下略
181
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◆1UOAiS.xYWtC
[saga]
2013/06/01(土) 23:51:12.28 ID:+j7WNh9Vo
数日して、彼女はベッドから起き上がれなくなった。
上体を起こすだけが精一杯で、歩く事さえできない。
医者を呼んで診せようにも、彼女の体の異変を、相談などできようはずもない。
『魔族』であると知れれば、どんな事になるか知れないからだ。
だが実のところ、その原因は、騎士には不思議な程はっきりと分かっていた。
以下略
182
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◆1UOAiS.xYWtC
[saga]
2013/06/01(土) 23:52:03.02 ID:+j7WNh9Vo
淫魔「……ごめんなさい。騎士さんに、こんな事……させちゃいまして」
騎士「気に病むな。この程度、何の事も無い」
病床に臥せったままの彼女へ夕食を運び、共に自身も食事を摂る。
以下略
183
:
◆1UOAiS.xYWtC
[saga]
2013/06/01(土) 23:52:38.69 ID:+j7WNh9Vo
淫魔「楽しかったですよ〜。色々連れて行ってくれましたし。騎士さん面白いじゃないですかぁ」
騎士「…………?」
淫魔「覚えてます? 初めてお船に乗った時、酔って大変でしたよね〜、騎士さんってば」
以下略
184
:
◆1UOAiS.xYWtC
[saga]
2013/06/01(土) 23:53:37.94 ID:+j7WNh9Vo
一週間後の夜、騎士は、眠っている淫魔の部屋に忍び入った。
灯りは提げていない。
部屋着の上にゆったりとしたガウンを羽織っただけの姿で、彼女へ近づく。
淫魔「……騎士さん? どうしたん……です、か?」
以下略
185
:
◆1UOAiS.xYWtC
[saga]
2013/06/01(土) 23:54:36.23 ID:+j7WNh9Vo
彼女の身体を覆い隠していた毛布を取り去る。
一枚の薄衣の中で、彼女の体からは温もりが消えかけていた。
淫魔「覚えて、ます?」
以下略
186
:
◆1UOAiS.xYWtC
[saga]
2013/06/01(土) 23:55:15.20 ID:+j7WNh9Vo
数日が過ぎて、人々がその家にやってきた。
姿を見せない二人を怪訝に思い、貸主と役人が、ノックをしてから入った。
暖炉には焼け残った薪が入ったままだが、不思議な程、片付いていた。
戸棚に収められた食器には埃一つない。
以下略
187
:
◆1UOAiS.xYWtC
[saga]
2013/06/01(土) 23:56:12.51 ID:+j7WNh9Vo
それから、千と数百年の時が経ち、魔界の一角、『淫魔』達の住まう国の最も栄えた街。
一軒の書店がある。
店内には、いくつもの『物語』を記した本があり、彼女らの王の城、その書庫にさえ引けを取らない。
入り口に面したカウンターに、一人の『淫魔』が坐して、広げた本に目を落としている。
以下略
188
:
◆1UOAiS.xYWtC
[saga]
2013/06/01(土) 23:57:23.15 ID:+j7WNh9Vo
書店主「ふわぁ〜……眠いわ。とても眠い……あぁ、いい天気ねぇ」
???「……外、雨だけど? お母さん。そういえば、昨日……国王陛下が来たんだって?」
店内にはもう一人、年若い「淫魔」の姿があり、きびきびと書架の整理をしていた。
以下略
189
:
◆1UOAiS.xYWtC
[saga]
2013/06/01(土) 23:58:28.42 ID:+j7WNh9Vo
短編、投下終了です
感想などいただけると幸いです
それでは、おやすみなさいー
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