過去ログ - 魔法使い「勇者がどうして『雷』を使えるか、知ってる?」
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188: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/06/01(土) 23:57:23.15 ID:+j7WNh9Vo
書店主「ふわぁ〜……眠いわ。とても眠い……あぁ、いい天気ねぇ」

???「……外、雨だけど? お母さん。そういえば、昨日……国王陛下が来たんだって?」

店内にはもう一人、年若い「淫魔」の姿があり、きびきびと書架の整理をしていた。
巻き毛と体つきは似ているが、顔立ちはむしろ鋭くしゃっきりとして見える。
そして彼女は、カウンターにいる店主を『母』と呼んだ。

書店主「ええ、そうよ。もう一休みしたら〜?」

書店主娘「うん、もうちょっと。……この辺掃除した方がいいよ、お母さん。埃がひどいよ」

『ワスレナグサ』の忘れ形見は、立派な『淫魔』になった。
あの人間界の朝に受け止めていた『種』が、彼女だった。
切れ長の隙無い瞳は、少なくとも『母親』には似ていない。
産み育てる事に、不思議な事など感じなかった。
母も祖母も曾祖母も、いつの間にか子を宿し、産み、そうやって血を繋いできたからだ。

それでも彼女は、『娘』を見る度に、どこか優しくて暖かく、懐かしい気分になれる。
覚えてはいないはずの、懐かしい『誰か』の面影を確かめられる。

忘れてしまった『思い出』は、『娘』に生まれ変わってくれた。

書店主「……そういえば、『コーヒー』にミルクと砂糖を入れたら、美味しいかしら〜?」

書店主娘「あ。それ、いけるんじゃない? 試そうよ。私、苦くて飲めないんだよね、あれ」

書店主「それじゃ、淹れてくるわね〜」

一輪の花に込められた願いは、今もなお、叶い続けている。
健やかなる時も病める時も、死が二人を分かち、たとえ忘却の谷に落ちたとしても、
そこに咲いた花は、決して枯れない。

それは、ひとりの騎士と、ひとりの淫魔の物語。


『ふたり』は、『ふたり』と『一輪』になった。









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