過去ログ - 魔法使い「勇者がどうして『雷』を使えるか、知ってる?」
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94: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/05/26(日) 02:40:27.89 ID:UMPAG6Zoo
僧侶「今は、王女殿下の親衛隊に抜擢されたとか……」

魔法使い「あはははっ! あんなガタイで、あんなコワモテで? やっぱ似合わない」

戦士は、二度と『戦場』に戻る事はなかった。
世界を救い、そこに住む人々を救ったその手で、人を殺めることはできなかった。
勇者が最後にそう言った、たった一言が――何年経とうと、胸に熱いから。
その代わりとして、かつて命を預けたその男に惹かれた、たった一人の女を護ると決めた。
何よりもそれは、王女の強い希望のためだった。

魔法使い「……あたし達は、変わらない。でも、あいつは……変わったんだね」

僧侶「ええ。……それもまた、人の強さなのではないかと。今は、そう思います」

魔法使い「変わらない事も、変わる事も。大事よね、やっぱり」

入り口の扉から、春風が吹きこんだ。
柔らかくて暖かい風に、桃色の花びらがひとつ、ふたつ紛れてくる。
舞った花びらが礼拝堂の滑らかな床に落ちて、一点の華を添えた。

僧侶「……あ、申し訳ございません。少しだけ……外します」

魔法使い「うん?」

開いた扉の向こうに、青年が立っていた。
つば付きの帽子をかぶった背の高い、人懐っこそうで、それでも力の籠もった目をした精悍な男だ。
見ると、肩掛けの鞄の中から手紙の束を取り出して、小走りに駆けてきた僧侶へ手渡していた。
僧侶はそのまましばらく彼と言葉を交わしてくすくすと笑い、青年の方は、どこか、緊張しているらしかった。
魔法使いはそれを見ると――失笑し、肩をすくめて一人ごちる。

魔法使い「なーんだ。……ちゃんと、『女の子』してんじゃないの」

僧侶がもう一度、祭壇の方を振り返った時。
そこにはもう、魔法使いは、いなかった。



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