過去ログ - 魔法使い「勇者がどうして『雷』を使えるか、知ってる?」
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95: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/05/26(日) 02:41:10.59 ID:UMPAG6Zoo
それから程なくして。
魔法使いは一人、決戦の地を訪れた。
まずは最寄りの村へ呪文で飛び、そこから少しだけ旅をした。
あの決戦へ望む道のりを、一人で辿るようにして。
休憩も、同じ場所で取った。
茶葉は使わず、沸かしたお湯を飲んで身体を暖め、使い古した天幕で眠った。

一年前、勇者が故郷だと言っていた農村を訪れ――――否、眺めた事がある。
丘の上から見る村は、とても美しかった。
言っていた通り大きな村ではなく、風車小屋がひとつ、鐘楼がひとつ、小さな民家が数える程度。
少し離れて農家があり、畑は収穫を控えて爽やかな風に揺れていた。

目を凝らしてみれば、どことなく勇者の面影がある、少女がいた。
確かめずとも、分かる。
あれは勇者の妹で、遅れて家から出てきた二人は、その父母だ。
世界を救った『勇者』にして『子』、そして『兄』は、旅から帰らなかった。
それでも、乗り越えていた。
乗り越えて――――明日を生きる為に、黄金の麦穂を刈り取っていた。

それを見届けると、魔法使いはその場を離れた。
ただ――――それだけを、見たかったから。

帰らなかった、勇者の代わりに。


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