過去ログ - 魔法使い「勇者がどうして『雷』を使えるか、知ってる?」
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96: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2013/05/26(日) 02:42:02.90 ID:UMPAG6Zoo
魔法使い「……そろそろ、あの場所ね」

身一つで辿った旅路は、最後の休息所へ近づいていた。
刻は、昼下がり。光の届かぬこの林を抜ければ、開けた丘に着くだろう。
風は暖かいが、少し湿っている。

もうここには魔王の城は無く、魔王もいない。
喉から入り込む地獄の瘴気もなく、魔物の声など聞こえてこない。
入れ替わるようにして、小鳥の歌声と虫の声だけが聴こえる。
これも、紛れもなく――――魔法使い自身が勇者とともに、取り戻したもののひとつだ。

やがて、昼なお暗い林の終わりが見えてきた。
緑の迷宮の出口に進むほどに、空が見えてくる。
そしてようやく。
林を抜けて、最後に語らった、あの思い出の場に着いた。

そこは、不思議と変わっていない。
もしかすると訪れた者が他にもいたのか、焚き火の痕が残っている。
座って暗闇の空を見上げた切り株も、あの時のままだ。
つい愛しげに、それを眺めてしまう。

その時、気付く。
湿地帯の不毛な悪臭は漂ってこない。
濡れてまとわりつくような湿り気もない。
崖の方へと歩いて、魔王の城の聳えていた沼地を、見下ろす。


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