過去ログ - ハンジ「あなたの言葉を胸に、私は生きていく」
1- 20
1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/23(木) 23:05:51.26 ID:foaYr8tyo
走馬灯。

ご存知だろうか。

遥か東洋で作られたもので、二重の枠があり、影絵が回転しながら写るように細工された灯篭のことだ。

死に直面した際に体験する記憶の反復現象を走馬灯現象と呼ぶのは、この走馬灯からきている。

どうしてそんな話をしだしたかと言うと、私は今からその走馬灯現象を体験するからだ。

SSWiki : ss.vip2ch.com



2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/23(木) 23:06:18.14 ID:foaYr8tyo
目の前に迫り来るトラック。

スピードを緩める気配はない。

私が屈み込むように倒れているせいで、運転手からは見えていないのだろう。
以下略



3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/23(木) 23:06:46.10 ID:foaYr8tyo
彼と私が出会ったのは、一年前の春。

満開の桜がさらさらと散り始めた頃であった。

桜並木を通り、舞い散る花びらを目で追うと、僅かならず気分が高揚してくる。
以下略



4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/23(木) 23:07:13.80 ID:foaYr8tyo
4mを越える巨体を、窮屈なほどに丸められてロープで固定されている。

細い目の中で、せわしなく眼球が動いているのが見えた。

口からは声ともつかぬ音が垂れ流されている。
以下略



5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/23(木) 23:07:40.92 ID:foaYr8tyo
彼から目を離せなかった。

見つめるほどに鼓動が激しくなっていく。

呼気が乱れていく。
以下略



6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/23(木) 23:08:10.46 ID:foaYr8tyo
無意識のうちに一歩近づく。

それでこちらに気付いたのか、彼のせわしなく動いていた眼球は私に固定された。

――私を見つめている。
以下略



7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/23(木) 23:08:39.74 ID:foaYr8tyo
彼の眼前まで進んで、少し膝を屈める。

本来であれば見上げるような巨体の彼も、ロープで固定されているために、少し屈んでもまだ私の目線のほうが高いくらいとなっている。

彼は音を出すのをやめて、じっとこちらを見ている。
以下略



8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/23(木) 23:09:07.65 ID:foaYr8tyo
彼は開いた口から何か音を出したかと思うと、またゆっくりと口を閉じていく。

代わりに、だらしなく垂れていた手を軽く握って持ち上げ、人差し指だけをぴんと伸ばしてきた。

私が伸ばした指と、彼が伸ばした指。
以下略



9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/23(木) 23:09:35.22 ID:foaYr8tyo
それからのことは薄っすらとしか覚えていない。

私は泣いていたと思う。

私の罪は赦されなかった。
以下略



10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/23(木) 23:10:03.19 ID:foaYr8tyo
私と彼の交流は、続いていった。

とは言っても何かができたわけではない。

彼は変わらず調査対象のまま、ロープで固定されていたのだから。


11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/23(木) 23:10:32.76 ID:foaYr8tyo
彼との交流は、昨今の少年少女ですら一笑に付すほどのものだった。

周囲に誰もいないことを確認して彼に近づくと、指を伸ばす。

彼もそれに答えるかのように指を伸ばしてきて、それらが触れ合う。
以下略



12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/23(木) 23:10:58.27 ID:foaYr8tyo
いや、正確に言えばもう一つあった。

私は指を触れ合わせる時に、ほのかに笑みを浮かべている。

対して彼は初めのうちはまったくの無表情であった。
以下略



13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/05/23(木) 23:11:19.30 ID:ZaDPj9WYo
良ssの予感


14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/23(木) 23:11:25.72 ID:foaYr8tyo
夏。

蝉時雨の中。

私と彼は指を触れ合わせた。
以下略



15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/23(木) 23:11:53.20 ID:foaYr8tyo
秋。

木葉時雨の中。

私と彼は指を触れ合わせた。
以下略



16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/23(木) 23:12:20.17 ID:foaYr8tyo
冬。

雪時雨の中。

私と彼は指を触れ合わせた。
以下略



17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/05/23(木) 23:12:20.63 ID:tRBSwZpAo
アレかよwwwwww


18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/23(木) 23:12:48.13 ID:foaYr8tyo
春。

舞い散る桜。

彼と出会った思い出の季節。
以下略



19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/23(木) 23:13:17.15 ID:foaYr8tyo
壁外調査にて、巨人の生態研究の調査対象として小型の巨人が捕獲された。

協議の結果、一匹を処分することになった。

一匹でも危険な巨人なのに、二匹はとてもじゃないが扱いきれない。
以下略



20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/23(木) 23:13:46.00 ID:foaYr8tyo
――貴重な調査対象です。

私の拠り所はそれだけ。

何度も主張した。
以下略



21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/23(木) 23:14:15.77 ID:foaYr8tyo
私は彼の元へ赴いた。

彼はいつものように微笑みを浮かべ、指を伸ばしてくる。

私も指を伸ばす。
以下略



39Res/11.72 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice