過去ログ - 恵美「もしも魔王の正体に気づかなかったら」
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32:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/05/24(金) 17:21:51.64 ID:raX+wY0oo
真奥「んじゃちーちゃん、またバイトでな」

千穂「はいっ」

お辞儀をしてから、千穂ちゃんが警官であるという父の元へ駆けていく。
それを見届けてから、貞夫がこちらに戻ってきた。
辺りは警官と救急隊員、それに野次馬でごった返している。
その少し空いた空間に、私と貞夫は立っていた。

真奥「あーと……」

彼が気まずそうに頬をかいて、言う。

真奥「俺、別の世界で魔王やってたんだよな」

冗談と笑い飛ばしたい言葉。
だが今の私にそれはできなかった。
見てしまったから。

崩落した地下で現れた悪魔。その姿は見間違えるはずもない、
仕留め損ねて以来探し続けていた魔王そのものだった。
私が切り飛ばした片方の角を除いて。

そしてその声、その口調、破けて散り散りになった服は、
……貞夫のものだった。
どうして気づかなかったのだろう。
思えば魔王とはまともに言葉も交わしていなかった。
交わしたのは剣と爪だけだ。

魔王としての貞夫を見た私は、勇者としての使命も忘れ、
何も考えることができず、言うこともできず、ただ立ち尽くしていた。

それを恐怖と取ったらしい貞夫――魔王は、魔翌力結界を維持したまま
瓦礫を持ち上げ、人々の救助に専念した。

何故、魔王が人を助けるんだ。
何故、貞夫が魔王なんだ。

問いかけたくとも言葉が出ず、ただ俯いていた。


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