過去ログ - 鷺沢文香エッセイ集『本とアイドルと私』
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222:CG出版編集部 ◆rSMipP4xr.[saga]
2013/07/15(月) 01:22:27.36 ID:w4dUq9e30

 もう一度、しかし先程よりも強く、ドアをノックする。...やはり無反応。益々怪しい。痺れを切らした隣人はドアノブに手を掛け、

「お邪魔するよ!」

以下略



223:CG出版編集部 ◆rSMipP4xr.[saga]
2013/07/15(月) 01:24:16.03 ID:w4dUq9e30

 ...もう、だめだ。打つ手立てなどまるで無い。ウチのアイドル生活もこれで終わってしまうのか...。


 そうしていよいよ、廊下と寝室を隔てる襖が勢いよく開かれた瞬間.....!
以下略



224:CG出版編集部 ◆rSMipP4xr.[saga]
2013/07/15(月) 01:26:07.22 ID:w4dUq9e30


 ...目が醒めたそうです。

 時刻は深夜0時を少し過ぎた頃。蛍光灯が書架の端に暗がりを作り出す中、かの少女...美玲ちゃんは嗚咽混じりの掠れた声で、先程まで魘されていたという悪夢を語り聞かせてくれました。
以下略



225:CG出版編集部 ◆rSMipP4xr.[saga]
2013/07/15(月) 01:28:31.04 ID:w4dUq9e30

「...大丈夫?」

 キッチンから戻ってきた寝間着姿の響子ちゃんがその様子を案じながら、カフェオレが注がれたカップを彼女の面前に差し出します。

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226:CG出版編集部 ◆rSMipP4xr.[saga]
2013/07/15(月) 01:31:11.31 ID:w4dUq9e30

 甘めに仕立てられたカフェオレの効能でしょうか。 幾分か落ち着きを取り戻すと、後ろから覆い被さるように抱き着く友紀さんにようやく気が回ったのか、体を捩りながら、何とも弱々しい威嚇をしだしました。

「ちょっと...いい加減離れろよぅ...。ひ、引っ掻くぞ!」

以下略



227:CG出版編集部 ◆rSMipP4xr.[saga]
2013/07/15(月) 01:38:56.02 ID:w4dUq9e30

 そうしているうちにふと、隣に座っていた響子ちゃんが何気なしに、

「でも、一体何が原因だったんでしょうねぇ。...文香さん、何か知ってますか?」

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228:CG出版編集部 ◆rSMipP4xr.[saga]
2013/07/15(月) 01:41:20.89 ID:w4dUq9e30


 ...ここ最近、事務所の小中学生の間ではホラーや怪談ものが流行っているようで、本を探し求めて連日私の部屋に詰め掛けて来ました。

 美玲ちゃんも多分に漏れず、昨日の夕方にやって来たのですが、元々そのような類の本が充実していない書架ですので、その殆どを既に貸し出し、虫食い状態となっている具合でした。
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229:CG出版編集部 ◆rSMipP4xr.[saga]
2013/07/15(月) 01:43:16.52 ID:w4dUq9e30

 それでも、どんなものでもいいので貸して欲しいとの美玲ちゃんの要望に思いあぐねた挙句、ホラーではありませんが、時に怪奇小説とも分類されるカフカの『変身』を勧め、1980年に新潮社から出版された「決定版 カフカ全集1」を手渡しました。


 読み手によって様々な解釈がなされる『変身』ですが、余程陰虐な場面があるわけでもなし、この程度なら問題無いだろうと高を括ってしまったのが、大きな間違いでした。
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230:CG出版編集部 ◆rSMipP4xr.[saga]
2013/07/15(月) 01:51:44.42 ID:w4dUq9e30


 ...大方のあらましを説明し終えた私が一時後悔と自責の念に駆られていると、唐突なくしゃみと同時に、美玲ちゃんが二の腕を摩りながら、再び震えだしました。

 どうやら汗で湿った寝間着が体温を奪い、底冷えをしてしまったようです。
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231:CG出版編集部 ◆rSMipP4xr.[saga]
2013/07/15(月) 01:54:40.48 ID:w4dUq9e30

 さて、一人で入れる、と渋る美玲ちゃんが友紀さんに連れられて浴室へと向かう合間に、私は換えの寝間着を取りに彼女の寝室へと向かいました。


 戸口を潜り、手探りで灯りを付けると、ピンクと黒を基調とした家具や所狭しと並べられた縫いぐるみが照らし出されました。その風合は年相応といったところでしょうか、全く彼女らしいレイアウトが微笑ましく思えました。
以下略



232:CG出版編集部 ◆rSMipP4xr.[saga]
2013/07/15(月) 01:56:38.41 ID:w4dUq9e30

 ...しかし、その中で一つだけ違和感を感じたのは、蛍光灯の真下に無造作に転がっている、目覚まし時計。恐らく、飛び起きた際に誤って落としたのでしょう。

 元ある場所に戻そうと拾い上げると、指先に不自然な窪みが当たるのに気が付きました。よく見てみると、そこに刻まれていたのは、一本の細長い筋。

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