14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/06/02(日) 22:08:34.36 ID:JoEqz7my0
とても良い思いをしたあの日から調子が悪くなるような事はなく、日々順調にアイドルとして成長していってるまゆ。
あの人の傍に居るべき人としての成長は……よく分からない。
けれども、進展はあった。それは、決心してあの人のために弁当を作ってみた事。
あの人はいつも市販のパンばっかり食べてて、しっかりした昼食を取れてない。
毎日遅くまで仕事しているのに、そんなの絶対に健康に悪いはず。
だったら、まゆは自分の弁当だけじゃなくて、あの人の為の弁当も作る。
家で料理を振舞えないのなら、こっちから持っていけばいいのだ。
1人分を作るのも2人分を作るのも、そう変わらない。
ただ、手間隙が増えるだけでそんなに面倒じゃない。
むしろ、面倒となんて一切思わない。
だってあの人の為に作ってるんだから、そんなの当然。
こっそり買ってきた、まゆが使わない方の弁当箱に料理を詰めていく。
男性の食べる量はあまり分からないけれど、まゆの弁当よりも割と多めに盛って、愛情と栄養とボリュームたっぷり。
完成した弁当を風呂敷でしっかり包んで、これで大丈夫。後はこれを渡すだけ。
……行動だけならばただ弁当を渡すだけなのに、ドキドキが止まらない。
あの人は受け取ってくれるのだろうか。味はあの人に合うのだろうか。まずいって言われたらどうしようか。
けれど、色々な予想を立てても全部ただの妄想。ここまでやったのなら最後までやり通そう。
やらないで後悔するより、やって後悔した方がいいに決まっている。
家を出た時の朝日は暑いくらいに眩しかった。
誰も来てないような朝早く、まゆよりもっと早く事務所に来ているのはあの人。
誰かが来るまでの時間だけど、まゆにとっては欠かせない2人だけの時間。
「まゆちゃんは早いね。家があの近さだったら、俺だったらもうちょっと寝てるなぁ……」
「でも、結局は早く着いてるじゃないですか。真面目なんですねぇ」
「ははは、本当はあんまり真面目じゃないんだけどなぁ」
こんな何気ない会話も、まゆにとっては大切な時間。今日はその時間に特別な事をするだけ。
仕事の準備をし始める彼に風呂敷で包んだ弁当を持っていく。
「それ、何?」
「まゆの手作りお弁当ですよぉ」
「……もしかして、俺の?」
「はい♪」
それを渡すと、彼の顔は今までで見たこともなかった表情に染まる。
あまり良い表情じゃなさそうだったから、渡すのがまずかったんだろうかと不安になる。
彼は何度か弁当とまゆを交互に見て、最後には笑顔で。
「あ、ありがとうまゆちゃん! ははっ、お昼が楽しみになってきたなぁ!」
彼からの返事は、本当に嬉しいと思っているような声。……良かった、受け取ってくれた。
弁当を持って喜んでいる彼を見て、まゆの疲れや不安が全て吹き飛んでいった。
愛妻弁当ってのは毎日こんな気持ちが味わえるのだろうか。だとしたら、作れる人は本当に幸せだなと思う。
まゆもいつか、そうなりたいな。
……後は味があの人に合うだけど、それはまだ分からない。
けれど、無事渡すことができたおかげか、この日の午前のレッスンはとても気持ちよく行うことができた。
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