過去ログ - まゆ「ソウシソウアイ」
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23:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/04(火) 04:15:58.53 ID:qHZXIXXt0

彼の車の中の匂いはなんだかとても安心できて、心地よくて、ほっとする。

ふと、外の景色を見ると、今は見慣れた都会の町並みが動いてゆく。

それを見るよりも彼に話しかけたいけど、運転の邪魔はいけないとか考えちゃって中々話しかけることができない。

景色以外に変化は無くて、いつ話かけてくるんだろうかと待ち構えているけれど……何も起こらない。

2人っきりなのにつまらない時間が続いて。

そして、心地よさについうとうと、と……

――気づいたときには、まどろんでいた。

意識が戻って、エンジンの音もまゆの曲も鳴ってなくて、いけないって思った時には目の前に彼の顔。

思ったよりも近くて、息が止まって呼吸ができなくなる。

「あ、起きた?」

「ご、ごめんなさい……寝ちゃいました」

「大丈夫だよ」

……寝顔見られたのかな。

恥ずかしがってると、鼻を通る磯の香り。

ここは海の近くなんだろうか。

彼に急かされるように車を降りて、その疑問はすぐに分かった。

海がすぐそこの小さな広場。

すぐ近くの向こう岸は、ビルの明かりが点々とあって夜も遅いはずなのに明るくて星のよう。

逆にこっちの明かりは少なくて薄暗いけれどそれもまたいい雰囲気で。

彼の魅力が一段と上がって見えるのも不思議じゃなかった。

「ここ、綺麗でしょ。まゆちゃんのところの自然がある景色もいいけど、こういうのもいいかなって」

広場のベンチで2人に座って遠くの綺麗な景色を見る。

お互い顔を向けずに、けれども密着するぐらい近づいて。

「……今日、誕生日だよね」

「わざわざ聞くんですか?」

こんな良いところに連れてっているのなら完全に彼も分かってるはずだろう。

まゆが言い返すと、気まずそうに頭を掻く彼。

「ごめんね、実は自信無くてさ。まゆちゃんの誕生日って今日だったかなって」

そんな曖昧なことを言う男の人は女の人に嫌われてしまいますよと、心の中での皮肉。

だけどまゆならそんな彼も許しちゃう。

「うふふ、今日で合ってますよ」

「……そっか、じゃあ。お誕生日おめでとう」

「……ありがとうございます♪」



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