9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/31(金) 00:49:36.29 ID:n4iG8r1+0
慣れてきてもアイドルの仕事はとにかく大変。
モデルのお仕事より多彩で覚えることがたくさんあるし、それ以外にもレッスンもしなくちゃいけない。
本当に忙しいときは目くるめくような勢いで……そのせいでついに体調を崩してしまった。
朝起きると咳が出る。体温計は微熱よりも上の数値。
仕事がある日だけれど行けるような体調でもない。
顔が見たいのに電話であの人と話をして、更に休む事を伝えなくちゃいけない。
当然、まゆの仕事のキャンセルのためにあの人が苦労する破目になるだろう。
そんな事を思うと、胸が締め付けられる。
ごめんなさいという声を心がずっとリピートされる。
恐る恐る携帯を取り、事務所に連絡する。たぶん、あの人が出てくれるだろう。
数回コールが鳴ってから、取られた電話越しに聞こえた声は予想通り、彼の声。
『まゆちゃんが朝に連絡なんて珍しいな。何かあったのか?』
「ごほっ、ごほっ……。その……まゆ、今日は体調を崩しちゃって……」
『何っ!? わ、分かった、今日の仕事はキャンセルしてくるから、まゆちゃんはゆっくり休んでて!』
咳を聞いてしまったからか、大きな音が鳴ると同時に焦っていると分かるぐらいの声。
音は立ち上がったような物音と思うとしっくりくるけれど、電話越しで聞こえるほど勢い良く立ち上がったのだろうか。
待ってくれない早口の放送のように、彼はその一言を言い放った途端に電話を切った。
謝ろうとしたけど、そんな余地が無かった。
……あの人の言うとおり、今日はゆっくり休もう。そして早く元気な姿を見せたい。
違う。
見せたい、じゃない。まゆが早くあの人の姿を見たいだけ。
1人寂しい思いを紛らわせたいだけ。
……本当にまゆは、我侭な子。
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