過去ログ - ベルトルト「駆逐してやる……。この世から、一匹残らず……!」
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10: ◆OYNwm7H46c[saga]
2013/06/01(土) 20:43:33.01 ID:lH/DtXrEo
「だ、大丈夫。みんなに兄貴アニキ言われて調子に乗ってるライナーが大丈夫なんだから僕は大丈夫に決まってる」

「八つ当たりかよ……」

 その通りだ。その通りだからちょっと放っておいてくれ。
 そう思っているのに、いつもより回る口は止まらなかった。

「……ちょっと考えてみただけだよ」

 僕は思った以上に、飲み過ぎていたのかもしれない。

「もし、兵科選択が一日早かったら。もし、内地に行く馬車が今晩出発してたら。
もし、調査兵団が遠征に出る日程がズレてたら。もし、明日が明日じゃなかったら。もし、僕たちが――」

「ベルトルト」

 断固とした低い声が後ろから響き、僕は足を止めた。
 振り返った先のライナーは俯いて、かたく拳を握っていた。

「それ以上はやめろ」

「……ごめん」

 一瞬言葉を失ってから、ようやく僕はそう呟いた。ライナーはおう、とだけ答えた。
 僕たちはまたさくさくと歩き出して、ライナーはすぐ隣に来た。

「今日はやっぱり喋りすぎだね」

「軽く3年分は喋ってたな」

「うん。ライナーは凄いよ。……思ったより、結構きつかった」

「馬鹿なこと言うなよ。いいか、明日が終われば、また故郷に近づけるんだぞ」

 ライナーはじっと前を見たままそう言った。
 それは訓練中に「ここさえ耐えればあとはもうすぐだ」とか何とか、
 班の誰かを励ます時とまったく同じで、僕は少しだけ目を細めた。
 本当に彼は心が強い。
 こんな途方もない秘密を抱えたまま、どうして誰の前でも変わらずにいられるのだろう。

「ライナーは、戦士だね」

「嫌味か」

「いや、本音だよ。ほんとうに、そう思ってる」

「言ってろ。……ほら、もう宿舎が見えてきた。さっさと帰るぞ」

「そうだね。帰ろう」

「ああ。帰ろう」

 合言葉のように僕たちは繰り返した。
 オレンジ色をした宿舎のランプが、夜闇にぽつんと揺れていた。


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