過去ログ - 八幡「徒然なるままに、その日暮らし」
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79: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/06/15(土) 23:59:20.10 ID:jZOTWVYV0
A 決然たる意思で、由比ヶ浜結衣はその壁に手をかける


 代わり映えのしないチャイムの音が、校内に遠く響き渡る。
授業の終了――というか放課後の始まりの方が意識としては近いか――を告げるその音を聞いて、教室にいる生徒たちは皆一様にその表情に喜色を滲ませている。
以下略



80: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/06/16(日) 00:03:52.54 ID:m6/l0qGM0
 とはいえ、過ごし易くなったということに間違いはないのだ。
あとは、それを引っ繰り返さないようにすることを心掛けるのみ。
どうあれ目立てば無用な軋轢を生みかねない下地は変わっていないのだから、大人しくしていた方がいい。
その方がきっと、誰もが穏やかに過ごせるはずだ。世はなべてこともなし。

以下略



81: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/06/16(日) 00:06:40.32 ID:m6/l0qGM0
「あ、八幡、これから部活?」
「お、おぅ」
「ぼくも部活なんだ。大会も近いし頑張らないと。じゃあまた明日ね」
「あぁ、また明日、な」

以下略



82: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/06/16(日) 00:09:59.56 ID:m6/l0qGM0
 見事なまでに中途半端。
静かでも素早くもなく、流れは澱み、クールでもない。
何だ、いつも通りの俺じゃないか。
そんな時間をかけたつもりはないんだけどなぁ。
とはいえ、戸塚の笑顔が見れたからもう何でもいいか。
以下略



83: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/06/16(日) 00:17:14.33 ID:m6/l0qGM0
「おつかれー」

 声をかけつつ扉を開けると、部屋には既に雪ノ下がいた。
いつもの席に腰掛けて、本を広げて読書の真っ最中だ。
俺が部屋に一歩踏み出すと、ちらと視線を上げてこちらを見てくる。
以下略



84: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/06/16(日) 00:20:41.65 ID:m6/l0qGM0
「遅かったわね」
「お前が早過ぎるんだよ」
「愚鈍なあなたを基準に考えないで頂戴、失礼だわ」
「まずお前が俺に対して失礼だという発想はないのか?」

以下略



85: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/06/16(日) 00:25:25.39 ID:m6/l0qGM0
「……」

 ふと視線を感じて、横目でちらと窺う。
何か知らんが、雪ノ下がこちらをじっと見ていた。
黙ったまま、微動だにせずに、じっと。
以下略



86: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/06/16(日) 00:29:17.69 ID:m6/l0qGM0
「雪ノ下?」

 何となく落ち着かなくなり、呼びかけてみる。
人間観察を常としている俺ではあるけれど、観察される側に回ることは滅多にない。
見るのはともかく、見られるのには慣れていないのだ。
以下略



87: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/06/16(日) 00:34:56.69 ID:m6/l0qGM0
「……雪ノ下、ね」
「?」

 聞こえてきた小さな呟きに、一瞬何を言ってるのか分からず戸惑ってしまう。
が、次の瞬間思い当たった。
以下略



88: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/06/16(日) 00:39:46.81 ID:m6/l0qGM0
 そもそも、そんな風に馴れ馴れしく振舞えるような間柄でもあるまいし。
手の届かない所で咲いているからこそ、高嶺の花と呼ばれるのだ。
間違っても、俺なんかが軽々しく触れていいものではない。
地を這う蛙が月に焦がれたとして、一体何ができようか。
眺めているだけで満足しとけ、という話である。
以下略



89: ◆/op1LdelRE[saga]
2013/06/16(日) 00:42:37.01 ID:m6/l0qGM0
 なので、何も言わない。
断固たる意志でもって読書を再開する。
ちくちくと視線は刺さってくるけれど、敢えて無反応を貫く。
雪ノ下の負けず嫌いは百も承知だが、こればっかりは譲ってもらわないと困る。

以下略



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