過去ログ - 奉太郎「軽音楽少女と少年のドミノ」
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18: ◆2cupU1gSNo
2013/06/27(木) 20:06:54.52 ID:Z5CFCVew0
「『ゲーム』に公平性がないからだ」
俺が答えると里志が満足そうに頷いた。
こいつ、俺にこう言わせたくて質問を誘導したな。
まあ、いつものことだし悪い気はしない。
ひとつの問題に対して複数人で意見を出し合うのは、考えをまとめるのに最適だしな。
俺は一息ついてから話を続ける。
「『ゲーム』は対等な立場の人間同士が行わなければ成立しない。
今は千反田が『ゲーム』の主催者の立場であるわけだが、
主催者だけが『ゲーム』の概要を理解していたところでどうにもならない。
参加者の俺たちにも『ゲーム』の概要が分かっていなければ、それは単なる主催者の自己満足だ。
これが『ゲーム』だと言うのなら、俺たちには既に情報を完全に与えられていなければならない。
そもそも『ゲーム』の開始を宣言するだけなら、このブックカバーに書く必要はないわけだしな。
それこそ口で言えばいいことだし、その辺の紙に書いたって構わない」
「つまり『ゲーム』のヒントは全てその文庫本に隠されてるってことになるわけだね?」
「そういうわけだ。
もっとも千反田に『ゲーム』の主催者としての良識があるという前提ありきだがな。
だがあれでも昔は推理小説を読んでいた時期があったと言っていた。
ノックスの十戒も知っていたはずだ。
その程度の良識は持ち合わせていると仮定して考えよう」
「そうだね。
そういえばホータロー、大切なことを聞いてなかったのを思い出したんだけど」
「何だ?」
「その文庫本は何なんだい?
僕はまだ開いてもいないから、そのブックカバーの中身を知らないんだよね」
文庫本に掛けられているのは紙製のブックカバーだ。
本を開いてもいない里志が中身を知らなくても無理はない。
俺は文庫本の中央付近を開いてから里志に見せる。
「『車輪の下』だ」
「ヘルマン・ヘッセの?」
「他にあるのか?」
「ないと思うけど。
でも意外だね、ホータローが『車輪の下』を読んでるなんて」
意外とは何だ。
だが里志の言ったことはある意味で間違っていなかった。
「俺は読んでない。
それは姉貴の文庫本だよ。
千反田が読みたいと言っていたんで、この前貸したんだ」
「やっぱりそうなんだね。
ホータローに『車輪の下』は似合わないと思っていたんだよ。
かなりセンチメンタリズムに満ち溢れた自伝風小説だからね」
さいですか。
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