過去ログ - 奉太郎「軽音楽少女と少年のドミノ」
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35: ◆2cupU1gSNo
2013/07/09(火) 18:38:46.07 ID:eFUnsoWc0


田井中から満面の笑みがこぼれる。
やはりドラムを叩きたい気持ちは募っていたのだろう。
それくらいなら俺にも分かってはいた。
でなければ田井中もわざわざシャーペンでリズムを刻んだりはしない。
田井中の笑顔に満足したのか、伊原も滅多に見せない清々しい笑顔を浮かべた。


「マジよ、たいちゃん。
どうする? 今から叩いちゃう?」


「じゃあ頼んじゃっていいか?
いやー、最近全然叩けてなくてウズウズしてたんだよなー。
悪いな、ありがとう摩耶花」


「いいのいいの、それくらいお安い御用よ」


どうやら今から軽音部を訪ねる方向で話が決まりそうだ。
音楽室は少し遠いが田井中のドラムを聴きたい気持ちもある。
俺が椅子から腰を上げると、伊原が肩を竦めながら言った。


「あら、あんたも来るの?」


「行ったら悪いのか?」


「別にいいわよ。
静かにしてられるんならね」


別に俺は騒がしい男じゃないだろう。
しかしてっきり「来るな」と言われるかと思っていたのだが、意外に嫌がらなかったな。
心当たりがないわけじゃないが、今はそれについて伊原に訊くのはやめておこう。
軽音部の部室で一度くらいは話す機会もあるはずだ。

それにしても伊原も田井中と親しくなったものだ。
当然ではあるが、初顔合わせの時は険悪なんて雰囲気ではなかった。
自分にも他人にも厳しい伊原だ。
納得のいかない現象には真っ向勝負のスタンスをあの時も崩さなかった。
その伊原が田井中とこんなに親しくなった原因はおそらくはあれだろう。


「おーい、早く行こうぜ、ホータロー!
置いてくぞー!」


いつの間にか荷物をまとめた田井中がドアの先で俺を呼んだ。
よっぽどドラムが叩きたかったらしい。
俺は文庫本を鞄の中に片付けると、肩を竦めてから田井中と伊原の後を追った。
里志を置いてきぼりにすることになるが、まあ、あいつのことだ。
独自の情報網で軽音部にまで辿り着くことだろう。


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