過去ログ - 奉太郎「軽音楽少女と少年のドミノ」
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39: ◆2cupU1gSNo
2013/07/16(火) 19:22:23.89 ID:aapC8NGG0
2.六月十三日
「なにをしたの、折木」
第二理科準備室で話を続けるわけにもいかない。
千反田の知人という眼鏡の女子に別れを告げ、
古典部の部室に戻った途端に伊原に浴びせられた第一声がそれだった。
里志もいるというのにこいつにとって、なにか問題を起こすのはいつも俺で確定らしい。
「なにかしてるのは俺じゃない」
そもそも用事があるんじゃなかったのか。
それを俺に訊かれるのを承知だったように、伊原はわざとらしく携帯電話を取り出した。
液晶画面にはメールの一文が表示されている。
メールの内容を確認するまでもない。
俺がじろりと視線を向けてやると、苦笑交じりに里志が頷いた。
「後を引く問題になるかもしれないからね、
これは摩耶花にも立ち会ってもらった方がいいと思ってメールしておいたんだよ」
なるほど、里志も里志で古典部の未来を考えてはいるのだ。
俺に千反田の対応を任せてなにをしているのかと思っていたが、そういうことだったらしい。
できることならこの伊原の反応も先読みして、俺の弁護をメールの中で一言はしてほしかったものだが。
いや、里志のことだ。
分かっていて伊原に最低限のことしかメールしていない可能性もあるか。
それは俺への嫌がらせというわけではおそらくない。
伊原に余計な先入観を持たせずに今の千反田を見せたかったのだろう。
「大丈夫、ちーちゃん?
また折木が変なことを言い出したんでしょ?
きっと『千反田の髪型を見てると暑苦しいからポニーテールにしろ』とかなんとか。
無理してそんな恰好をしてなくてもいいんだからね?
折木にはわたしの方からきつく言っとくし」
俺のことをどれだけ傍若無人な人間だと考えているのか。
ただ伊原も今の千反田の様子がおかしいということは分かっているらしい。
携帯電話を鞄の中に片付けた伊原は甲斐甲斐しく千反田の心配をしていた。
伊原と千反田がどの程度親しいのか俺は知らない。
だが伊原の前で千反田が今の様なカチューシャの使い方をしたことはなかったはずだった。
オールバック風に前髪を流してカチューシャでまとめる。
それがカチューシャの本来の使い方のはずだが、
そういう使い方をしている女子を俺はあまり見たことがない。
例えばかの入須先輩もカチューシャを着用しているが、今の千反田の様には着用していなかった。
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