過去ログ - 奉太郎「軽音楽少女と少年のドミノ」
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43: ◆2cupU1gSNo
2013/07/16(火) 19:25:44.17 ID:aapC8NGG0


「私のホータローたちへのお願いはさ、
私の今の状態をどうにかしてほしいってことなんだ」


「今の状態……?」


そう呟いたのは里志だった。
里志も薄々感付いてはいるのだろうが、これまで前例のない事態に戸惑っているようだ。
俺だってそうだ。
頭の中で答えを出しているというのに、その答えを自分自身で信じられていない。
まったく滑稽なものだった。


「ホータロー達がそれをお願いできる相手なのか、
信用してもいい相手なのか私には分からなかったんだよな。
でも私の中のこの子が言ってたんだよ、ホータロー達は信用できる相手だって。
そういう思い出が私の中にあったんだ。
だから試させてもらったんだよ、本当に信用できる相手なのか。
何となく思いついたこの『ゲーム』を解決してもらうことでさ」


「咄嗟に思いついたわりには手の込んだ『ゲーム』じゃないか」


「ははっ、そりゃそうだ。
だってあれ、正確には私が考えた『ゲーム』じゃないもんな。
この『ゲーム』はさ、この子……、えるって子が読書してて何となく思いついた『ゲーム』なんだ。

『車輪の下』の車輪は『社会』の暗喩なんですね。
それなら、この本を使えばちょっとした『ゲーム』ができるかもしれません。
この本が示す場所はどこでしょう? そんな感じの『ゲーム』を。
うふふ、折木さんならわたしの思いついた『ゲーム』なんて、すぐに解決してしまうんでしようけど。

って、そんな感じにさ。
私はそのえるって子が思いついたゲームをちょっとアレンジしただけなんだ。
まあ、えるって子はその問題を思いついただけで、
それをホータローに出題するつもりは全然なかったみたいなんだけどさ」


「ちょ……、ちょっと待ってよ!
えるって子ってどういうことっ?」


伊原が椅子から立ち上がって叫ぶ。
だが伊原も分かっていて叫ばずにはいられなかっただけだろう。
その表情には戸惑いだけでなく納得の色も強く見えた。

そうだ。
『えるって子』。
そいつのこの言葉こそ、今までの全ての違和感の正体を物語っている。
そうしてそいつは一度深呼吸してから俺たちを見回し、全ての違和感の答えを口にした。


「言葉通りの意味だぞ、摩耶花。
私の名前は田井中律。
お前たちがよく知ってる千反田えるって子じゃないんだ。
いや、身体はえるって子の物なんだけどな。
ついさっき、気付いたらいつの間にかこのえるって子の身体になってたんだ。
いや、このえるって子の中に私の心が入り込んだってことになるのか?

まあ、今はどっちでもいいか。
とにかくさ、私はお前たちが知ってるえるって子じゃないんだ。
それでお願いしたいんだよ。
どうしてこんなことになっちゃったのか。
どうして私がこのえるって子の中にいるのか。
その原因を突き止めてほしいんだ。
……頼めるか?」


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