過去ログ - 奉太郎「軽音楽少女と少年のドミノ」
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42: ◆2cupU1gSNo
2013/07/16(火) 19:24:57.60 ID:aapC8NGG0
「言葉通りの意味だ、伊原。
こいつが俺たちに仕掛けた『ゲーム』は試験だったんだよ。
俺たちがこいつのお眼鏡に適うかどうかの試験のな。
さっきこいつ自身が言ってただろう?
『私のお願いを聞いてもらえそう』だって。
つまりこいつはその『お願い』を切り出していいものか、俺たちを計りかねていたんだよ。
そのために俺たちに『ゲーム』を仕掛けたんだ」
「言おうとしてることは分かるけど……」
伊原が言いよどむ。
だが俺には伊原がなにを言おうとしているのかは分かっていた。
視線を向けてみると里志も真剣な表情で頷いていた。
里志にも伊原の言いたいことは分かっているのだろう。
そう、伊原はこう言いたいのだ、千反田が俺たちを試す『必要性』があるのかと。
そしてそれは皆無なのだ。
伊原は俺をそうよく思っていないようだが、
それでも千反田が俺の推理力を信頼していることは信じている節があった。
俺ではなく俺を信じる千反田を信じているように見えた。
だからこそ伊原は疑問に思ってしまうのだろう。
千反田が俺の推理力を試したという現実を。
千反田は俺の推理力を試したりはしないのだから。
しかしその千反田が俺を試したということは、つまり信じがたいがそういうことになる。
これがたちの悪い冗談でなければ、だが。
「訊いておきたいことがある」
俺は視線を伊原からそいつに向け直し、わざと低い声で威圧的に言ってみせる。
半分笑っている様な表情をしていたそいつは、真剣な表情になって俺に訊ね返した。
「何だ、ホータロー?」
「これはたちの悪い冗談ではないんだな?」
「冗談の方がいいのか?」
どうだろう。
それは俺自身にもよく分からなかった。
たちの悪い冗談であってくれた方が今後の展開は楽そうだ。
妙な冗談に目覚めた今の千反田の様子を、たまに思い出したようにからかってやる。
そういう薔薇色なのか灰色なのかよく分からない未来が待っていることだろう。
だが話はもうそう単純ではないし、
俺の知っている千反田はこんなたちの悪い冗談を弄するタイプでもなかった。
だから俺は溜息をつきたくなってしまっているのだ。
「冗談じゃないんだよな、残念だけどさ」
そいつは寂しそうに微笑みながら続ける。
そう言うのならおそらくはそうなのだろう。
ならば俺も今の事態に真剣に向き合うしかない。
俺は溜息をつくのを断念し、そいつの続きの言葉を首肯で促した。
そいつはまた真剣な表情になって続ける。
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