過去ログ - 奉太郎「軽音楽少女と少年のドミノ」
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460: ◆2cupU1gSNo[saga]
2014/04/24(木) 19:20:37.84 ID:ffmefjFJ0
「かなり薄れてはいますが、田井中さんと一緒にいた折木さんの姿はまだ憶えています。
折木さん、すごく楽しそうに見えました。
田井中さんも折木さんと一緒にいられて幸せそうでした。
とてもお似合いのお二人だと思いました。
それでわたし、秘密にしないといけないと思ったんです。
田井中さんがいなくなってしまったと知ったら、折木さんはとても悲しまれると思って……」
俺が田井中のことを好き?
いや、別に嫌いというわけではないが、それは見当違いだ。
俺と田井中は目的が同じだった。
それで多少気が合って、一緒にいて楽しいことも多かった。
そういうことなのだ。
まったく、大日向の時と言い、千反田の気遣いは見当違いなことばかりだ。
それでも悪い気がしないのは、千反田の人徳というものなのだろうか?
とりあえず千反田の勘違いは正しておかねばなるまい。
「あの、だな、千反田」
「はい……」
「俺は別に田井中のことが好きだったわけじゃない。
嫌いなわけでもないが、とにかくお前が考えている様な関係じゃなかったんだよ。
俺のことを気遣ってくれたことに関しては悪い気はしないが、それは見当違いってやつだ」
「そう……なんですか……?」
「田井中が去ったことに関してなにも感じていないと言ったら嘘になる。
だが俺は満足しているし、あいつも満足して去ったはずだ。
お前を救うって目的を果たせたんだからな。
俺と田井中の関係は、そう、確かさっきも言ったな?
俺と田井中は仲間だったんだ。
持っていた情報こそ違ったが、お前をどうにか救おうと苦心した仲間だったんだよ。
俺とあいつが特別な関係に見えたのなら、そういうことだ」
「仲間……ですか。
それじゃわたし、勝手な勘違いで……。
田井中さんにも失礼なことを……」
千反田が更に顔を赤く染めていく。
このままだと頭に血が上がって失神してしまいかねない。
千反田の部屋の中で失神されてしまった日には、どんな誤解をされるか分かったもんじゃない。
どうにかしなければと部屋の中を見回して、俺はちょうどいい物を見つけた。
ドラムスティック。
伊原が田井中にプレゼントした物だ。
俺はそれを手に取ると、顔中を真っ赤にしている千反田に握らせた。
「ときに千反田」
「はっ、はいっ?」
「お前はまだドラムを叩けるのか?
それくらいの田井中の記憶は残っているか?」
「い、いえ、無理です。
ドラムに関する記憶は真っ先に消えてしまったみたいで、試してみても全然叩けませんでした。
実はどなたかにまたドラムを叩いてほしいとお願いされたらと思うと、不安でしょうがなかったんです……」
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