過去ログ - 奉太郎「軽音楽少女と少年のドミノ」
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462: ◆2cupU1gSNo[saga]
2014/04/24(木) 19:21:45.13 ID:ffmefjFJ0





一旦ドラム練習を終了し、俺たちは田井中の残したカセットテープの裏面を聴くことに決めた。
当然ながらドラムしか録音されていなかったが、不思議と原曲を想像できた。
数曲聴いて裏面のテープの残りが少なくなり始めた時、静かな息遣いが聞こえ始めた。
当然ながらそれは田井中の息遣いに違いなかった。
予感はあった気がする。
これが最後なのだと感じながら、俺と千反田は息を呑んでそれを待った。
十数秒後、ラジカセのスピーカーから田井中の最後の言葉が流れ出した。


「よっ、ホータロー、それにえる。
参ったよ、お見通しなんだもんな。
言い残したことがあってさ、裏面の最後に吹き込んでおこうと思ったんだよ。
つっても、もう謎解きでもなんでもないメッセージなんだけどな。
ま、最後まで聞いてくれると嬉しいよ。

今更になるけど、この二ヶ月ありがとうな、ホータロー。
お前がいたからこの二ヶ月楽しかったよ。
これは私の勝手な思い込みなんだけど、お前がいたおかげでえるも救えたんだと思うぞ?
今のえるが元気なのは私とホータローの共同作業の結果だよ。
なんの根拠も無いけどな、ははっ。

だけど楽しかったのだけは本当だ。
古典部の皆で活動するのはすっげー楽しかった。
巫女のコスプレも楽しかったし、冬実をちょっとからかってやれたのも楽しかった。
摩耶花には悪いけど、合宿で摩耶花が変な勘違いされたりしたのも面白かったよな。
『氷菓』の完成が見届けられないのは心残りだけど、お前たちならいい『氷菓』が作れると信じてるよ。
『氷菓』製作頑張れよ!

私はこれでこの世界から居なくなるわけだけど、元気に生きろよ、二人とも。
省エネ主義も悪くないけど、もし一生懸命になれることを見つけたら、それに頑張ってくれ、ホータロー。
一生懸命になれた時は、お前ならきっといいなにかを残せるよ。
私だってそれにずっと助けられてたわけなんだしな。

それでさ、こう言うのも変なんだけど、いつかきっとえると私とお前で遊ぼうぜ?
いや、今の世界で無理なのは分かってるぞ?
私はえるの身体にしか宿れないし、これから先宿るつもりもないもんな。
だからさ、私たちが遊ぶのはずっとずっと未来の話だ。
何兆、何京回か先の宇宙の話だよ。
そればっかりは無理だって言うなよな?

そりゃすっげー低い可能性だってことは分かってるよ。
宇宙が何京回繰り返してるのか分かんないけど、私がえるの身体に宿れたこと自体が奇蹟レベルなんだ。
その奇蹟レベルを更に奇蹟で何乗もしたくらいの可能性でしか、私たちが一緒にいる宇宙なんてできないはずだ。
今までの宇宙で私とホータローたちが一緒にいた世界なんて一つも無かったしな。

でも、できるよ、できるって私は信じる。
ホータローと出会った世界でえるが生きられるって奇蹟だって起こせたんだ。
ずっとずっと諦めなかったから起こせた奇跡なんだ。
だから私は諦めないよ、ホータロー。
細胞も消えて原子以下の素粒子になったって忘れない。
忘れずにホータローたちとまた遊べる未来を夢見続けるよ。
ホータローも、私も、えるも、里志も、摩耶花も、冬実も、澪も、唯も、ムギも、梓も、和も……、
せっかくだから私の前世も勢揃いしているような世界だって、いつかは作れるはずなんだ。
その世界で遊んでやるんだよ、私たちは。
その暁にはお前を思い切りからかってやるから覚悟しとけよ、ホータロー?
それまでえると仲良くやるんだぞ?

さてと、そろそろテープの残りも少なくなってきたな。
それじゃあ最後になるけど今までありがとな、ホータロー、それにえる!
この二ヶ月、楽しかったのはお前たちのおかげだ!
遠い未来の話になるけど、その時を楽しみにしてる!

以上、録音終わり!
放課後ティータイムのドラマー兼古典部臨時部員田井中律!
またな!」


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