10: ◆IpxC/P/Kzg[saga]
2013/06/11(火) 13:18:30.10 ID:hhjSfFKI0
【乃々の逃走力が日々上がっていく】
まずい。
俺は森久保乃々を仕事に連れて行くどころか、遭遇することも難しかった。
まさにはぐれメタルである。倒しても何の特もないのだが。
森久保乃々の逃走力は日々上昇中↑↑↑
「ああ、ちひろさん。乃々はどこへ行ったかご存知ありませんか」
『乃々ちゃんですか?さっき事務所から出て行きましたよ』
「そんな!ああ、ありがとうございます。すぐに追いかけます」
こんなことは日常茶飯事であった。
むしろこれは緩い方であった。まだまだ先がある。
今回は色々なパターンをご覧いただこうではないか。乃々はどこだ。
「社長!乃々を見ませんでしたか。もうすぐ、仕事なんです」
『乃々くんか?彼女なら、先ほど社長室の窓から飛び降りて逃走していたよ』
「わけがわかりません!でもすぐに追いかけます!」
そこまでして森久保乃々はイーサン・ハントになりたいのであろうか。
あるいはアンチ仕事なのだろうか。逆に感心するレベルである。
窓を飛び降り、車を乗継、時速150kmで逃走する乃々。
だが、それもここまでだ。俺はついに森久保乃々を追い詰めたのだ。
ああ、ここまででタクシー代がいくらかかったのか。しかし仕方ない。
もう彼女は袋小路だ。いくら足が早くとも左右壁なら問題ない。
じりじりと歩み寄っていく。手がわきわきしている。
「追い詰めたぞ、乃々。今日は、仕事に行ってもらうからな」
『………』
「乃々。頼むから、仕事に行こう。今日は、大事な仕事なんだ」
あと一歩。さらに一歩。俺は森久保乃々の肩を掴ん―――。
あれ。なんだ、これは。乃々に触れられない?
そのとき、俺の携帯が鳴っていた。
「も、もしもし。どうしたんですか?」
『どうした、はこちらなのだが…君、今どこに居るのかな』
『乃々くんは事務所で待っていると言うのに』
電話が切られる。森久保乃々には相変わらず触れない。
俺の手が彼女の身体を通り抜ける。なぜ?
彼女は笑って、静かに言った。
「…ざ、残像なんですけど」
おわり
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