過去ログ - ムラサメ研究所を脱走してきたニュータイプ幼女たちが…
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298: ◆EhtsT9zeko[saga]
2013/07/06(土) 19:37:05.53 ID:VXHUrXhO0

 俺は、手の中の無線モジュールを握りしめた。

 こんな状況だってのに、いや、実際ビビってしょうがないってのに、胸の内が震えているのを感じていた。

 あの日、俺はメキシコのあの場所で、死んだ。なんにも出来ずに、殺された。そう思っていた。

輸送中の飛行機の中で目が覚め、基地に着いて会ったマライア大尉にいつものトゲトゲしい口調ではなく、

キーキー声で怒られて初めて、事態を理解できた。

俺は、この人達に助けられたんだってことを。素直に、嬉しかった。

嫌いだったはずの大尉が、誰にも見つからないように捕虜に食事を提供していた俺たちと同じことをしていたってのが。

そんなだいそれたことをやってのけるような人がこんなにもそばにいたのかってことも。そんな人に助けてもらったってことも。

そして、まだ俺に出来ることがあると知って安心した。

あの日、死んだと思った俺が出来なかったことに、もう一度望めることが嬉しかった。

 それは罪滅ぼしなのかも知れなかった。

最後の瞬間まで 、あいつらの本当の辛さや苦しみを理解してやれなかったってことを詫びたかった…

いや、違うかもしれない。これは俺の問題だ。全部のことが終わったとき、俺は、胸を張ってあいつらに会いたい。

負けたまま、なにも出来なかったまま、大尉に助けられたままで、あいつらのところに行くわけにはいかない。

 俺は、俺だって、戦える。大事な存在の一人や二人も守らずに、安全な場所へ逃げていくなんて出来るはずがないだろう!

オールドタイプの俺があいつらを助けて、

俺達オールドタイプが皆、ニュータイプを嫌っているなんていうこの宇宙に漂っている幻想をぶっ壊してやるんだ!

 大尉、こんなチャンスを与えてくれたことを、感謝します。上司として、先輩として 、俺に見本を見せてくれたことにも。

あなたのお陰で、俺は迷わずに行ける。

 俺は、非常階段を出た。上と同じ、真っ白な壁と照明。ただ白いだけのものが、こんなにも脳に響くとは思ってもみなかった。

俺は眩しさに目を細めて腕のモバイルコンピュータの画面を確認して、アヤさんの言っていた有線のケーブルを辿る。

八の字状の形になっている地下3階は半分が生活スペース、もう半分が食料や機材の倉庫になっているようだった。

その一画に、有線ケーブルが集まっている部屋がある。おそらくここに、メインの終端装置があるはずだ。

 そこにこの無線モジュールを取り付ければ、研究所の電波を使ってダリルさんとも通信が出来る。

こんな場所で、外からの情報と支援なしに進めば敵に悟られるのも時間の問題だ。急がなくては…

 俺は八の字になった廊下を駆け出す。太ももと膝の境目が遠くで痛んだ。

あの日、ルーカスさんの指示を無視して撃ってきたティターンズ一般兵士にやられた傷だ。

包帯とテーピングで補強し麻酔を打って誤魔化してはいるが、動くたびに激痛なのだろう鈍い痛みがうっすらと感じられて

力が抜けそうになる。脂汗は、止まらない。だが、そんなことを言っている場合ではないんだ。


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