過去ログ - ムラサメ研究所を脱走してきたニュータイプ幼女たちが…
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576: ◆EhtsT9zeko[saga]
2013/08/14(水) 23:03:50.11 ID:p5dyD009o

 アリシア博士は、亡命したかっただろうな。生きて、レオナと一緒に地球へたどり着きたかっただろう。

 もしかしたら、レオナに施された記憶操作は、クルスト・モーゼスという博士の親切心からだったのかもしれない。

その出来事を聞かされたか、聞かされる前だったか分からないけれど、

レオナの心を守るために、家族の記憶を封印してくれたのかもしれない。

今のレオナのように、それを受け入れる準備が整うまで…。

 レオナは紅茶をグッと飲み干して、あたしの目の前に突き出してきた。お代わりを要求しているようだ。

あたしは、とりあえずポットでもう一杯紅茶を入れてあげる。

それに口をつけたレオナは、ふと、視線をあたしの背後に走らせた。

 振り返るとそこには、マリが居た。マリは、オドオドしながら、扉の影からこちらをのぞくようにして見つめている。

 「マリ、ごめんね。もう大丈夫」

レオナは笑っていった。その表情にあまり力はなかったけど。

 それを聞いたマリが、やっぱりオドオドしながら、あたし達の方に歩いてきた。

レオナの腰掛けていたソファーの隣に座って、戸惑いながら、レオナの手を握った。

「姉さん、悲しかったの?」

マリがそう尋ねる。そう、あのときのレオナから漏れていた感情は、悲しみに似ていた。

でも、ただの悲しみだけじゃなくてもっと複雑で激しい感じだったけど。

 「うん」

レオナは静かにそう返事をして、やんわりとマリを抱きしめた。

マリは抵抗することなく、力を抜いてレオナに身を任せる。レオナは、マリに回した腕に力をこめた。

「マリ…私達のお母さんは、立派な人だったよ…実験のためだけに、私を産んだんじゃなかった。

 私を愛して、守ってくれた。私は…やっぱり、道具なんかじゃ、なかったんだ…」

レオナはそういいながら涙をこぼした。それからクスっと笑って

「マリは、お母さんを知らなかったんだったね。ごめん、分からないことを言って」

とマリを開放する。でも、マリはレオナの手をとったまま、まっすぐにレオナを見据えて言った。

「分かるよ。姉さんは今、悲しいけれど、寂しくはない。そうでしょ?」

マリは穏やかな笑顔で笑った。でも、それからシュンと不安げな表情になる。

「わたし達は、道具として生まれて来たのかもしれない。だから、いつも寂しいんだろうなって思う…

 姉さん、わたしも、姉さんと一緒にいたら、そうじゃなくなれる日が来るかなぁ?」

マリの瞳は、涙に震えていた。レオナはまた、ギュッとマリを抱きしめた。

「うん。約束するよ」

レオナも、震える声でマリにそう伝えた。

 あぁ、ダメだ、あたし。じっとしてらんないよ…こんなの!

 そう思った次の瞬間には、あたしは、二人に飛びついて力いっぱい抱きしめていた。

「レオナも、マリもあたしが守る!守ったげるから…大丈夫…大丈夫だよ!心配なんてしなくていい!

 だから、だから…もう、泣かないで…!」

そんなことを叫んでいたあたしが、レオナよりもマリよりもひどい顔をして泣いていたらしいけど、

まぁ、そんなことは気にしない。

レオナたちが笑顔になってくれれば、あたしだってすぐに負けないくらいの明るい顔で笑ってやれるんだから!




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