23:@[saga]
2013/06/15(土) 17:30:23.96 ID:rH3krSfi0
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それは杏とプロデューサーが初めて出会ったときの記憶だった。
当時のプロデューサーは、今みたいな化け物じみたスペックじゃなかった。人並みにミスはしてたし、スケジュール管理が甘いこともままあったし、アイドルと信頼関係を築くのにも苦労してた。
杏は、そんなプロデューサーが担当した初めてのアイドルだった。
「さっさと出掛けるぞ双葉。いつまで寝てる気だ。遅刻する気か」
「うっさいなぁ。そんなにせかせかしてると禿げるよ?」
「俺の頭皮の心配をしてくれるなら、これ以上ストレスをかけるんじゃない」
「マジメだなぁ。立派立派。でも杏はそういう人種が一番嫌いなの。杏は極力楽して生きてきたいんたよ。あんたみたいに暑苦しいのはノーセンキュー」
「……このガキ。大人を舐めるんじゃないぞ」
「いやー犯されるー」
「お望みならそうしてやろうか」
プロデューサーは靴を脱いで玄関を上がってきて、床に転がってた杏を抱き起こして壁に押し付けた。
「本気?」
「謝るか?」
「やだね。だって、全然本気じゃないもん。脅すならもっと乱暴にやんなきゃ」
「アイドルにそんなことできるか」
「マジメだなぁ。ほんとに犯してくれたら、慰謝料で生きてけたのになー」
「擦れたガキだな。春でも売ったか?」
「それはまだ。でもアイドルがダメだったら、どうなるかな」
「そんなことはさせない。絶対に俺が双葉を、トップアイドルにしてみせる」
「絶対なんて言って、責任取れるの? もしダメだったらどうする? ハリセンボンでも丸飲みする?」
「その時は、俺がお前を買ってやる」
「へえ? いくらで、何回分?」
「俺の生涯賃金で、一生分買ってやる」
「なにそれプロポーズ? キモッ」
「それぐらいの覚悟ってことだ。ほら立て。早くしないと本当に遅刻する」
「あはは、顔真っ赤だよ? かーわいっ」
「お前もな」
「えっ?」
このあと杏は荷物みたいに車へ担ぎ込まれて出社した。
まさかほんとにプロデューサーが養ってくれるだなんてことは思わなかったけど、それでもこの人なら、今まで出会ってきたどんな大人よりも真剣に杏のことを考えてくれるって思った。それくらい純粋でまっすぐな目だったんだ。
だから杏は、暴走列車みたいに杏を振り回すこの人に、文句ばっかり垂れながらも、なんだかんだで最後までついていった。
そして気がつくと、杏は頂点に立っていた。
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