22:@[saga]
2013/06/15(土) 17:08:55.41 ID:rH3krSfi0
・・・・・・
休暇初日の月曜、朝7時10分。
やることもないし、オンラインゲームが終わったら積みゲーでも消化しようかと思ったんだけどさ。
まさか初日から熱を出して寝込むことになるなんて、思いもよらなかったよ。
「39度6分」
重病だよね、これ。一人暮らしだと普通に死ねるレベルだと思うんだけど、これほんとにどうしよう。
家族は北海道だし、知り合いといったらアイドル仲間くらいしかいないんたけど、みんな仕事があるだろうし。
多分この事を伝えれば、プロデューサーならきっと駆けつけてくれるとは思う。あの人は、そういう人だから。
でもそれはだめなんだ。プロデューサーは杏の母親じゃないんだから、こんな個人的なことで呼び出したりしちゃいけないんだ。
ほんとはわかってる。今の杏は、ただ意地になってるだけだってことも。そして、もしプロデューサーが来てくれなかったらと思うと怖くって、それで連絡できないってことも。
頭がガンガン痛む。気持ち悪いし頭痛もする。鼻水は止まらないし、喉も痛すぎだし、咳も止まらない。寒くて体が震えてるけど、それなのに変な汗をかいてる。
やばいな、これ。杏、ほんとに死んじゃうのかな。
気づいたら杏は携帯を握っていた。心細くなった杏がどこに連絡しようとしたかなんて、言うまでもない。
あわてて携帯を放り投げる。何回か床を跳ねながら転がっていく携帯を見つめて、下唇が杏の意思に反して震え始める。情けないような、心細いような、そんな惨めな気分になった杏は、勝手に溢れ出す涙を止めることはできなかった。
誰が見てるわけでもないけど枕に顔を埋めて泣いてると、そこでさっき投げ捨てた携帯に着信があった。どうやらメールではなく電話らしい。
誰でもいいから助けてほしかった。だからすがるように携帯が転がってるところまで這っていって手を伸ばしたところで、思わず息が止まる。
着信は、プロデューサーからだった。
せめて他の誰かだったなら、気兼ねなく助けを求めることができたかもしれないのに。よりにもよって、着信はあの人からだった。
「……」
杏が硬直してる間にも、呼び出しベルは鳴り続いてる。出るなら出るで早くしないといけない。でも、こんな喉で健康をアピールできるわけもないし、咳を我慢できるとも思えない。そうしたら、その瞬間にプロデューサーは全部察して飛んできてしまうだろう。
それだけは絶対にできない。
着信音が鳴りやむ。少し安心したのと同時に、また涙が溢れてきた。
そしたら今度はメールが送られてきた。もちろんプロデューサーからだ。
『大丈夫か? なにかあったか?』
どんな根拠でそんなこと聞くんだ、この男。超能力者か?
『ごめん寝てた。ていうかオフなんだから連絡しないでよ。電源切るね。おやすみ』
送信。これでまた電話してくることもないだろう。ひとまず安心だ。
一応ほんとに電源を切って、携帯を放り出す。これで完全に外との繋がりは断たれた。
今の時間は7時20分。こんな最悪な体調じゃ、ゲームなんてできるわけないし、ここはおとなしく寝ておくことにしよう。
布団を頭まで被る。きっと次に目を覚ました頃には、全部よくなってる。
そう信じて、杏は目を瞑った。
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