26:@[saga]
2013/06/15(土) 19:25:55.40 ID:rH3krSfi0
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目を覚ますと、ぼやけた天井が目に入った。見慣れた電灯や染みが輪郭を結ぶのと同時に、自分が置かれている状況を完全に思い出して憂鬱になった。直前までの幸せな気分も相まって、かなりマジメに死んでしまいたいとさえ思った。
そしてほとんど無意識に、初恋の相手を呼んでいた。
「ぷろでゅぅさぁ……」
「呼んだか?」
「うん……うん?」
突然、逆さまの顔が目の前に現れた。いつも不機嫌そうな目つきと、血色の悪い顔色。もうすっかり見慣れた、杏の大好きな人。
なんだ、これ。なんで杏の枕元で、この男が覗き込んできてる?
そうか、これは夢だ。杏の鬱積した欲求がついにこんな幻想を生み出してしまったんだ。そうに違いない。
それならもっかい寝よう。起きたときにもっと惨めな気持ちにならないように、さっさと起きてしまうことにしよう。
さ、目を閉じて……
「こら杏。寝るな起きろ」
プロデューサーが杏のほっぺを乱暴にグニグニやってくる。その痛みでようやく杏は、これが現実だってことを知った。
「ってか、なんでッ……!?」
次々と浮かんでくる疑問を口にしようとしたところで、杏は思い出したかのように激しく咳き込んだ。同時に喉の痛みと頭痛を覚えて、布団にくるまったまま身を丸める。
「落ち着け杏。疑問にはあとで答えてやるから、今は安静にな。もう昼の2時頃だが、どうせ朝からなにも食ってないだろう。お粥を作ってあるから、ちょっとだけでも腹に入れておけ」
そう言いながらプロデューサーは、近くのテーブルで湯気をたててるお椀を取り寄せる。
「体起こすぞ。ほら、口開けてくれ」
「んっ……」
まるで母親が子供にするみたいに、スプーンですくったお米をふーふーして冷ましてくれるプロデューサー。なんだか無性に恥ずかしくなって顔をそらしたら、肩を抱くみたいに腕を回されて余計に恥ずかしい格好になってしまった。
仕方なく、一口食べる。
「どうだ、しょっぱくないか? いや、鼻が詰まってて味なんてわからないか」
たしかに、鼻が詰まってて味はわからなかった。それにもともと薄目の味付けになっていたんだと思う。
それでも……どうしてかな。すごく、美味しかった。
「杏? どうした、不味かったか? それとも、どこか痛いのか?」
「ううん……ぢがう……」
涙や鼻水でぐしゃぐしゃな顔をプロデューサーの胸に押し付ける。一瞬 驚いた声を出したプロデューサーだったけど、すぐに杏の頭を優しく撫でて受け入れてくれた。
次に昼食を再開したときには、お粥はすっかり冷めきってしまっていた。
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