29:@[saga]
2013/06/15(土) 19:40:19.77 ID:rH3krSfi0
「ああ。昼休みに事務所を抜け出して、杏の無事を確認したらすぐに戻るつもりだったんだ。だが、全然無事じゃなかったからな。今日は事務所に戻らないとメールして電源を切った。もう怖くて携帯に触れん」
「なっ……!?」
「念のため今日の分の書類とパソコンは持って来といて助かった。まあ、杏が日頃から言ってることだろう。たまには休めって。10時間くらいここで休んでくよ。ちひろさんには明日にでも土下座すればいい。安いもんさ」
なに言ってるんだ、この男は。仕事に私情は挟まない性格だったじゃんか。責任感が人一倍強い性格だったじゃんか。それなのに、どうしてこんなばかなことを? 杏にはうんざりしてるって言ってたじゃんか。なのに、なんで。
「余計なことは考えなくていい。おとなしく寝て、食って、また寝とけ。そういうのは得意だろ?」
そう言いながらプロデューサーは杏の方へ寄ってきて、布団から身を乗り出してた杏を優しく押し戻した。その手つきがほんとに優しくって、ガラス細工でも扱うみたいに優しくって、胸がきゅっと締め付けられた。
「……ばか」
「お前の馬鹿が感染ったのかもな」
「杏なんかをプロデュースしようって時点で、世紀の大ばかだよ、プロデューサーは」
「くだらんこと言ってないで、さっさと寝ろ」
プロデューサーは杏の肩まで布団をかけて、小さな子を寝かしつける時みたいに 優しくおなかをぽんぽんしてくれた。ちょっと恥ずかしかったけど、もういろいろと今さらな気がして、おとなしく目を瞑った。
こんなに気持ちよく眠れたのは、三ヶ月ぶりくらいだった。
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