172:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/21(金) 15:30:26.52 ID:5tVhYlnK0
一行は順調に進み、ほぼ予定通りに山登りを始める。
今回の行軍の最大の難関、三百メーター以上の高さを持つ反り立つ岩壁だ。
臆病風に吹かれ壁に対して十分な射角が取れなければ登る事が出来ず、途中でガスが切れてしまいリタイアとなる。
より遠くにアンカーを飛ばすためには壁面にほぼ垂直になる事が要求される。
173:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/21(金) 15:31:11.12 ID:5tVhYlnK0
刺さらないぞ、ライナーはきっとそう続けようとしたのだろう。ベルトルトの放ったアンカーは二つとも壁に弾かれ、彼の身体はゆっくりと下へ傾いていった。
ダズ「へ? へぇぇぇえっぇえええええ!?」
ベルトルトは真っ逆さまに落ちてゆく。
174:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/21(金) 15:33:02.11 ID:5tVhYlnK0
皆の悲痛な叫びもむなしく響くだけだった。
落ちてゆく彼が私の横を取りすぎる時、横顔が少しだけ見えた気がした。
私はその表情に激しい感情を覚えた。
ユミル(なぁおい……)
175:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/21(金) 15:33:58.82 ID:5tVhYlnK0
「とどけぇえええええ!!!」
左のアンカーを彼に向けて発射する。
なるべく手足が良いが我儘は言えない。
176:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/21(金) 15:34:43.05 ID:5tVhYlnK0
落下するエネルギーを消失させるために私の身体にはかなりの負荷がかかるだろう。
まず彼に背を向け、右のアンカーを壁面に打ち直す。
「うらああああああ」
177:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/21(金) 15:36:38.07 ID:5tVhYlnK0
金属が裂けた音の後に体は宙を舞った。
どうやら留め具の部分が過負荷でバラバラになってしまったらしい。
どう見ても高さは百メートル以上残っている。
死ぬのはそれほど怖くなかった。彼を助けられない事の方が悔しかった。
178:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/21(金) 15:38:31.68 ID:5tVhYlnK0
破裂音。
大砲を撃った時のような大きな音が下で起こった。
その直後、背中に温かな手が添えられたような気がした。
179:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/21(金) 15:40:07.25 ID:5tVhYlnK0
ユミル「……あれ? 生きてる」
我ながら間抜けな言葉が出たものだ。
ベルトルト「おはよう。と言っても夜なんだけどね」
180:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/21(金) 15:40:54.39 ID:5tVhYlnK0
ユミル「……お前何で自殺しようとしたんだ」
ベルトルト「ユミルには譲れないものってあるかい?」
ユミル「……自分の意思かな」
181:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/21(金) 15:42:17.97 ID:5tVhYlnK0
ベルトルト「結論だけ言うと俺はある時期から記憶がおかしくなっている」
ベルトルト「今まで僕に教育を施してくれた女性、俺は『母さん』と呼んでいた人なんだけど、彼女は俺の母親じゃなかった
ベルトルト「思い出したんだ。この記憶は間違いだと」
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