39: ◆.g97gKoujg[saga]
2013/07/04(木) 23:17:25.24 ID:ONjpnU0t0
「御館様、帯と履き物を…」
「手早く頼む」
茨木はマリアヴェルが置き去りにした浴衣の帯を取り出すと、彼女は両腕を水平に広げた。
手慣れた様子で浴衣を着付け直す茨木を尻目に、マリアヴェルは死に瀕している凉一を見ていた。今も彼から流れ続けている血液はちょっとした水溜まりを造り始めていた。
程なくして帯を着け終えたマリアヴェルだったが、穴だらけで鮮血の染み塗れの浴衣に真っさらな黄赤色の帯というなんともちぐはぐな格好になってしまった。しかし彼女は自分の観てくれなど大して気にしない風に茨木が用意した黒塗りの桐下駄を履く。
「あの少年は?」
「私を庇って鉛玉を浴びた」
茨木の問いを簡素な返答をしたマリアヴェルは血の気の引いた凉一の顔を見つめる。奇跡的に頭部に被弾は診られない、即死は免れたが反ってそれが彼を苦しませる結果を導いていた。
「馬鹿な奴だ……あれくらいで私が死ぬわけないのに」
身を呈してまで自分を庇った凉一の有り様に、マリアヴェルは嘲笑とも取れる薄い笑みを浮かべた。しかしーー。
(ど、どうしよう……やっぱりあの時の小僧だ)
実はマリアヴェルの心の内では激しい動揺の嵐が巻き起こっていた。
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