121: ◆.g97gKoujg[saga sage]
2014/04/05(土) 22:45:03.65 ID:ujHUU/pt0
  
 凉一は八畳程のその部屋を渡り、茨木が出ていった側の障子を開ける。うっそうと生い茂る木々が凉一の視界に飛び込んできた。 
  
 外だ―― 
  
122: ◆.g97gKoujg[saga sage]
2014/04/05(土) 22:49:41.47 ID:ujHUU/pt0
  
  「……外に出ても?」 
  
   
 慣れた自分のスニーカーを履きながら凉一は茨木に尋ねた。 
123: ◆.g97gKoujg[saga sage]
2014/04/05(土) 22:54:27.73 ID:ujHUU/pt0
  
  道行くままに林道を五分程歩き続けると立ち並ぶ木々の向こうに瓦葺きの屋根らしき物が見えてきた。 
  
 更に進むと開けた場所に出て、その全容が明らかになる―― 
  
124:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/04/28(月) 22:02:09.65 ID:nFI+81ze0
 ほしゅ 
125: ◆.g97gKoujg[sage saga]
2014/05/04(日) 00:09:17.87 ID:zd+RR8SO0
  
 白髪頭に深い皺、麻の単の着物が堂に入っている……少し腰が曲がって杖をついているものの老人の貫禄は、この大屋敷に相応しいものがあった。 
  
   
  「え、はい……あっ、すいません! その……勝手に入って……」 
126: ◆.g97gKoujg[sage saga]
2014/05/04(日) 00:15:38.90 ID:zd+RR8SO0
  
  「吾妻(あづま)です。どうぞ良しなに」 
  
  「比良坂凉一(ひらさか りょういち)です……あの、御館様ってマリアベル……さまの事ですよね?」 
  
127:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2014/05/18(日) 08:32:27.58 ID:ywiEHcvO0
 ふむ 
128: ◆.g97gKoujg[sage saga]
2014/05/29(木) 12:47:16.26 ID:XxNTUaYr0
  
 ひとしきり話終えた吾妻は杖を手に立ち上がった。 
  
   
  「年寄りの長話に付き合わせてしまいましたな。お出かけするのでしょう?」 
129: ◆.g97gKoujg[saga sage]
2014/05/29(木) 22:39:36.17 ID:AYh6U4af0
  
  「……行かせて宜しかったのですかな?」 
  
  「良くはないな……」 
  
130: ◆.g97gKoujg[sage saga]
2014/05/29(木) 23:12:19.21 ID:AYh6U4af0
  
  
  吾妻屋敷の外には視界一面の田園風景が広がっていた。 
 風に運ばれた業雲が月の光を遮り、辺りには雨を呼んでいるかのような蛙の群唱が鳴り止まない。 
  
131: ◆.g97gKoujg[sage saga]
2014/06/16(月) 00:35:32.76 ID:J7A8yhom0
  
  夜の田園地帯を進む凉一は、湿った風に雨の匂いを感じた。 
  
  「……降るかもしれないな」 
  
132: ◆.g97gKoujg[sage saga]
2014/06/16(月) 01:06:40.83 ID:J7A8yhom0
  
 凉一は目を凝らし耳を澄まして前方の気配を探ると、何者かの足音が聞こえる。 
 次第に近付くそれは、ついに目の前に現れた。 
  
  
133:>>132ちょっと訂正 ◆.g97gKoujg[sage saga]
2014/06/16(月) 01:10:36.69 ID:J7A8yhom0
  
 凉一は目を凝らし耳を澄まして前方の気配を探ると、何者かの足音が聞こえる。 
 次第に近付くそれは、ついに目の前に現れた。 
  
  
134:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2014/06/20(金) 10:59:50.68 ID:3EQzu3tF0
 突然ですが宣伝です!  
 >>1が謝罪するまで続けます! 
 文句があればこのスレまで!  
  
 加蓮「サイレントヒルで待っているから。」  
135:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/07/20(日) 16:36:39.63 ID:zYO7ro1M0
 まってるよ保守 
136: ◆.g97gKoujg[saga sage]
2014/07/31(木) 22:55:38.13 ID:DqCXhqTW0
  
 『貴方のきょうだい』と、少女はそう言った。 
  
 『姉弟』『兄妹』凉一には姉も妹もいない。 
 まるで要領を得ない……その真意を問おうとした凉一は少女の右目に釘付けになった。 
137: ◆.g97gKoujg[saga sage]
2014/07/31(木) 23:02:32.53 ID:DqCXhqTW0
  
  「……? ボクは……何で」 
  
 少女の姿はもうない。 
 この雨で流れ落ちたように少女の気配は消え失せて……いや、凉一から茅との邂逅(かいこう)の記憶が抜け落ちていた。 
138: ◆.g97gKoujg[saga sage]
2014/07/31(木) 23:08:51.61 ID:DqCXhqTW0
  
  「帰らなきゃ……」 
  
 何故、この場で立ち止まっているのか解らない凉一は、いつの間にか降っていた雨に打たれていた。 
  
139: ◆.g97gKoujg[saga sage]
2014/08/04(月) 01:34:44.25 ID:FySASW9O0
  
  凉一は田園地帯を抜けて住宅街に入っていた。自家のある駅の方へ近付くにつれ傘をさす通行人がちらほら見受けられた。 
  
  (あの郵便局……三叉路) 
  
140: ◆.g97gKoujg[saga sage]
2014/08/04(月) 01:39:49.54 ID:FySASW9O0
  
 子供の頃から見馴れているシャッターには『比良坂建具』の文字、祖父の仕事場が併設されている凉一の生家はいつもと変わらずそこにあった。 
  
 ――懐かしい。 
  
141: ◆.g97gKoujg[saga sage]
2014/08/04(月) 01:44:45.99 ID:FySASW9O0
  
 ――帰る事ができるのか? 
  
 凉一の脳裏に別れ際に交わした茨木の言葉がよぎる。 
 そして、マリアヴェルの必至な訴えも―― 
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