41: ◆.g97gKoujg[saga]
2013/07/04(木) 23:26:44.26 ID:ONjpnU0t0
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日暮れ近くまで降っていた雨は止み、望月が闇夜を晴らしていた。辺りは冷たい空気と雨上がり独特の匂いに包まれている。
標鳥山【しるべとりやま】の頂上付近にある崖から生えるようにせりだした、地元住民が【天狗岩】と呼ぶ場の先端にマリアヴェルは腰掛けていた。
その身を包むレースのネグリジェが緩やかな風にそよぐ。
(む、少し薄着すぎたか?)
寝室からそのまま飛び出して来た彼女は靴すら履いていない……寒気を感じるのは当たり前の事だ。しかしそんな寒さをも忘れさせる美しい満月に少女は魅了されていた。
虫達のささやかな合唱をBGMに月光浴を興じるマリアヴェルは、その耳に異音が混じっている事に気付いた。
(足音か?獣ではないな、こんな時間に登山とは……歩幅が小さい、女?いや、子供……か?)
初めは自分を迎えに来た茨木かとも思ったがそうではないらしい。足音が近づいてくる細い登山道に顔を向けたら、黄色の雨合羽を着た男の子が汗だくになりながら登って来るのが見えた。
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