過去ログ - 絹旗「私が探し続けたものは――」
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13: ◆1yXtrQq8OHOj[saga]
2013/07/12(金) 00:46:15.07 ID:/v0IwgxGo

〜〜〜

「最愛ッ!」

幻想に駆られて心が壊れる一歩手前。
たった一人の少女の英雄になる事に憧れ、やっとその少女を手にした男が初めてその役割を果たした。

「ていとく……」

垣根は食べ物や飲み物がつまったビニール袋を放り出し、きつく絹旗を抱きしめる。

「どうした?」

優しく、囁くように耳元に声をかける。
垣根の声と体温を現実だと理解した絹旗の喉がくぅと小さく鳴った。

「ていとくが、起きたら、ていとくがいないから……わたし……捨て、捨てられたのかと……全部全部幻だったんじゃないかって……」

子供のように泣きじゃくりながら、垣根の肩に顔を押し付けた。

「ごめん、寝てたからさ。食うもんとか買いに行ってたんだ。
お腹、空いてるだろ?」

ぽんぽんと頭を撫でながら、なだめるが、絹旗は泣き止む様子がない。

「……俺が、お前を捨てるなんてあり得ないことだ。
お前のためなら世界だって敵にまわす。
お前を失うくらいなら世界でも人類でも滅ぼしてやる、そのくらい俺はお前を想ってる。大丈夫だ」

髪を撫でながら、しっかりと抱き寄せる。
心地の良いあたたかさに、自分の心が満たされ、同時に何かが失われていくのを感じた。

「大丈夫だ、俺は……いつだってここにいるから。
お前の涙を拭うのは俺の仕事だ。
だから、大丈夫。この先にどんなことがあっても……お前への気持ちだけは変わらない。
十年も変わらなかったんだ、この先百年だろうと千年だろうと……変わるわけがない。
お前はいつだって、俺の最愛だ」

小さな朝の光が、小さく重なる二人の心を、優しく照らしていた。


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